
処方薬「スリンダ錠28」(ミニピル)のご説明

現在、日本で経口避妊薬や月経に関する症状の改善薬として一般的に使用されているのは「低用量ピル」です。しかし、世界ではより高い安全性と避妊効果が期待できる薬として「ミニピル」が多くの女性に支持されています。
これまで日本ではミニピルは未承認薬として扱われていましたが、2025年6月より、あすか製薬の「スリンダ錠28」が国内で初めて承認され、販売されることとなりました。これにより、より多くの人が安全にミニピルを利用できる環境が整いつつあります。
ミニピル(POP)とは
ミニピルとは、プロゲスチン(黄体ホルモン)成分のみを含んだ経口避妊薬のことです。
英語では Progestin-Only Pilll(プロゲスチン・オンリー・ピル)と呼ばれ、その頭文字を取って「POP(ポップ)」と略されることもあります。
現在、日本で一般的に処方されている低用量ピルは、エストロゲンとプロゲスチンという2種類の女性ホルモンを組み合わせた製剤です。この低用量ピルは、高い避妊効果と月経症状の改善効果が期待できる一方で、静脈血栓症の発症リスクがあることから、喫煙習慣のある人や高血圧、肥満などの持病を抱える人、また40代以上の女性に対しては慎重な処方が求められるなど、一定の制限が存在します。
一方でミニピルは、プロゲスチンのみを成分としながらも、避妊や月経トラブルの改善に十分な効果が期待できる薬剤です。最大の特徴はエストロゲンを含まない点にあり、これにより血栓症リスクを大幅に抑えられるとされています。
実際に、WHO(世界保健機関)のガイドラインでも、ミニピルは低用量ピルと比較して安全性が高く、より多くの女性が安心して服用できる選択肢として位置づけられています。
日本初のミニピル「スリンダ錠28」が2025年6月に販売開始
世界中の女性が、避妊や月経に関するトラブルの軽減を目的に服用しているミニピル。しかし日本では長らく未承認薬として扱われてきたため、処方を希望する場合は個人輸入に対応した医療機関を探す必要があり、気軽に処方を受けられる状況ではありませんでした。近隣に対応医療機関がないことを理由に、服用を諦めた方も少なくありません。
低用量ピルに比べて血栓症リスクが低く、より安全に服用できると世界保健機関(WHO)にも認められているにも関わらず、長らく日本国内では承認されていない状態が続いていました。
そうしたなか、2025年5月19日、あすか製薬が製造販売するミニピル「スリンダ錠28」が厚生労働省より正式に承認されました。6月下旬から販売開始されており、ミニピルが日本国内で製造・販売されるのはこれが初となります。
このスリンダ錠28の承認をきっかけに、今後は女性のQOL(生活の質)向上に向けた選択肢がさらに広がることが期待されています。
スリンダ錠28の特徴
スリンダ錠28の特徴は以下のとおりです。
副作用が少ない「ドロスピレノン」を配合している
ドロスピレノンは黄体ホルモンの一種です。ピルは、配合される黄体ホルモンの種類によって第1世代から第4世代に分類されており、ドロスピレノンは第4世代に該当します。
他の黄体ホルモンに比べて、人間の持つ自然なホルモンに近い作用があるとされており、副作用が起こりにくいのが特徴のひとつです。
月経症状の緩和作用が期待できる
スリンダ錠28は、避妊効果だけでなく、月経症状の緩和効果が期待できます。特に月経困難症に対しては有用とされており、生理痛の軽減や経血量の減少を目的に処方されることもあります。
男性ホルモンの働きを抑制する効果が期待できる
スリンダ錠28に含まれるドロスピレノンには、男性ホルモンの働きを抑える効果が期待されています。女性の体内にも男性ホルモンは一定量存在しており、過剰になるとニキビ、薄毛、多毛症といった症状の原因になることがあります。
ドロスピレノンを含むスリンダ錠28を服用することで、こうした男性ホルモン由来の症状の改善が期待できるとされています。
スリンダ錠28が向いている人
スリンダ錠28は、以下にあてはまる人におすすめのミニピルです。
避妊をしたい人
スリンダ錠28は、高い避妊効果が期待できます。
女性の体内では、生理周期に応じてホルモンの分泌量が変化し、それに伴って排卵や月経が起こります。スリンダ錠28を服用すると、黄体ホルモン(プロゲスチン)の濃度が一定に保たれ、体が「妊娠している」と錯覚しやすくなり、排卵が抑制されやすくなります。
仮に排卵が起こった場合でも、子宮内膜が十分に厚くならず、受精卵が着床しにくくなることで妊娠の可能性は大きく下がります。
臨床データによると、スリンダ錠28を正しく服用した場合の避妊成功率は約99.6%(パール指数0.3917)と報告されています。パール指数とは、100人の女性が1年間その避妊法を使用した場合に妊娠する確率を示す指標で、一般的な低用量ピル(パール指数0.3~0.9)と同等の高い避妊効果があるといえます。
ただし、すべての避妊法と同様に、100%妊娠を防げるわけではないため、コンドームとの併用などでより確実な避妊を行うことが推奨されます。
臨床データ参考:あすか製薬|スリンダ錠28
月経に関する症状を緩和したい人
スリンダ錠28は、経血量が多くなる過多月経や、強い月経痛を伴う月経困難症の緩和にも効果が期待されているミニピルです。
この薬は、24錠の実薬と4錠のプラセボ(偽薬)で構成された28錠タイプの服用設計となっており、服用期間中の4日間に月経に似た「消退出血」が起こるように調整されています。
主成分であるプロゲスチンの作用により子宮内膜の増殖が抑えられることで、通常の月経よりも出血量が少なくなり、月経痛などの不快な症状も軽減されやすくなります。
そのため、月経に伴う痛みや不快感に悩む方にとって、スリンダ錠28は有効な選択肢の一つとなる可能性があります。
これまでピルで副作用を感じたことがある人
過去にピルを服用した際に、副作用によって服用を中断した経験がある方にも、スリンダ錠28はおすすめです。
スリンダ錠28に含まれる黄体ホルモン「ドロスピレノン」は、経口避妊薬に用いられる成分の中でも比較的副作用が少ないとされており、これまで副作用に悩まされた方でも服用しやすい可能性があります。
また、一般的にピルの副作用は、服用開始から2~3シートを終える頃には体が慣れ、軽減または消失するケースが多いとされています。
もちろん体質には個人差があるため、不安がある場合は医師に相談しながら開始するのがおすすめです。
血栓症リスクにより低用量ピルの服用が難しい人
スリンダ錠28は、血栓症リスクの要因とされるエストロゲンを含まないため、比較的安全に服用できる経口避妊薬です。
以下のような血栓症リスクをお持ちの方で、これまで低用量ピルの処方を断念していた方も、ミニピルであれば処方できる可能性があります。
- 40歳以上の人
- 喫煙習慣のある方
- 高血圧症の人
- 肥満傾向のある方
- 脂質異常症の方
- 血栓症の素因や既往歴、家族歴がある人
上記に当てはまる人は、スリンダ錠28の服用希望を申告したうえで、医師に相談してみてください。
スリンダ錠28の副作用
スリンダ錠28を服用することで、以下のような副作用が現れる場合があります。
とくにスリンダ錠28のようなミニピルは、低用量ピルに比べてホルモン(プロゲスチン)の含有量が少ないため、服用開始から数か月間は不正出血が起こりやすいとされています。
一方で、吐き気は主にエストロゲンに由来する副作用であり、スリンダ錠28にはエストロゲンが含まれていないため、発生頻度は低いとされています。
これらの副作用は多くの場合、一時的なものであり、継続して服用することで徐々に軽減していくケースが一般的です。
不正出血の多くは一過性で心配のないものですが、症状が強く出る場合や、数シート服用しても改善が見られない場合は、自己判断せず、早めに医師へご相談ください。
スリンダ錠28の服用方法
スリンダ錠28の服用方法は以下のとおりです。
- (経口避妊薬を初めて服用する場合)月経1日目から服用を開始する
- 毎日定刻に1日1錠服用する
- 1シート飲み終えたら、翌日から新しいシートの服用を開始する(休薬期間はおかない)
ミニピルは服用時間が3時間以上ずれると、避妊効果が低減します。必ず定刻通りに服用しましょう。
飲み忘れがあった場合、翌日までに飲み忘れに気付いたのであれば、直ぐに飲み忘れた分を服用し、定刻にもその日の分を通常通り服用します。2日連続して飲み忘れた場合も同様です。
ただし、3日以上のみ忘れた場合は服用を中止し、次の月経の1日目から新しいシートの服用を開始します。
2日以上連続して飲み忘れた場合には、避妊効果が大きく低減している可能性があるため、次のシートに切り替わるまで別の避妊方法を併用してください。
スリンダ錠28の価格
当クリニックでは、スリンダ錠28は以下の価格で処方させていただいております。
スリンダ錠28 | 3,000円/1シート |
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処方に必要な診察料等が別途かかります。まずは、お気軽にご相談ください。
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