予防法「ドキシペップ(Doxy PEP)」のご説明
近年、日本では梅毒が大流行するなど、性感染症の対策が迫られています。性感染症の予防にはコンドームが大切ですが、着用しないまま性行為に及んでしまうこともあるでしょう。
当院では、アメリカで報告された新しい性感染症予防策である「ドキシペップ(Doxy PEP)」を取り入れています。ここでは、ドキシペップの方法や効果、注意点などについて、詳しくお伝えします。性感染症の不安がある方は、ぜひご相談ください。
ドキシペップとは
ドキシペップは、性感染症に感染するリスクのあった性行為の後に抗菌薬を服用することで、性感染症を予防するという新しい方法です。「ペップ」は、「リスクに接した後におこなう予防法」という意味になります。
2024年6月に、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)から、ガイドラインが発表され、有効性が認められている方法です。
方法は、抗菌薬である「ドキシサイクリン」200mgを、リスクのある性行為から72時間以内に1回、服用します。
コンドームなしでおこなわれた以下のような行為は、すべてリスクのある性行為に該当します。
- 膣内挿入
- オーラルセックス
- アナルセックス
性行為のあと、早ければ早いほどよいとされますので、不安のある方は早めにご相談ください。
ドキシペップで期待できる効果
ドキシペップを実施することで、性感染症の発症をある程度予防することができるとわかりました。
梅毒
梅毒は70〜90%程度の確率で予防できます。梅毒の感染者数は2021年ごろから爆発的に増えており、性的にリスクの高い生活をされている方は特に注意が必要です。
梅毒の詳細はこちら
淋菌感染症
淋菌は50〜60%程度の確率で予防できます。1回のセックスで感染する確率も約50%と高いです。
淋菌感染症の詳細はこちら
クラミジア感染症
クラミジアは70〜90%程度の確率で予防できます。性感染症の中では、最も患者数が多いです。男女ともに、将来的な不妊に繋がることがあります。
クラミジア感染症の詳細はこちら
ドキシペップの副作用
頻度は高くありませんが、「ドキシサイクリン」には副作用もあります。食欲低下、吐き気、皮疹(皮膚にブツブツができる)、口内炎などの症状があらわれる場合があります 。
これらの症状以外にも気になる症状が出た場合は医師に相談してください。
ドキシペップの費用
ネオクリニックでのドキシペップの費用は
ドキシペップ(ドキシサイクリン) | 1,000円/1回 4,000円/5回 |
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となっています。
ドキシペップはどんな人に向いている?
性産業に従事している方、性被害にあった方、性的なパートナーが複数いる方、性感染症予防のために個人輸入で薬を購入している方、過去に梅毒や淋菌・クラミジアに感染した方などに、ドキシペップが有効ではないかと考えています。
ドキシペップの効果を調べるための調査に参加した人は、以下に当てはまる方々でした。
- 18歳以上
- HIV感染に対する曝露前予防(PrEP)をおこなっている人/HIVに感染している人
- 過去1年以内に梅毒、淋菌、クラミジアのいずれかに感染した人
- 男性と性行為をする男性/トランスジェンダー女性(生物学的に男性だが性自認が女性の人)
一方で、体の性別と性自認が一致している人には大きな効果がなかったという報告もあります。つまり、上記の条件に当てはまらない方について、十分な効果が得られるかはまだ未知数ということです。
とはいえ、性感染症の予防に対して一定の効果は得られると考え、当院では年齢や性別を問わず、必要と考える方にはドキシペップをおこなっています。興味のある方は、お気軽にご相談ください。
ドキシペップの注意点
注意点を知り、適切にドキシペップをおこないましょう。
適切な服用が必要
適切に服用しなかった場合には、抗菌薬の効かない細菌「耐性菌」へと変化してしまう可能性が考えられます。処方を受けた場合は、必ず説明の通りに服用してください。
自己流の服用方法をとったり、ほかの人へ分けたりしてはいけません。
乳製品や一部の薬との組み合わせに注意
以下のようなものと一緒に服用しないようにしてください。組み合わせに問題ないかどうか判断できないときは、医師や薬剤師に確認しましょう。
乳製品
薬の服用の前後2時間程度は、牛乳などの乳製品を避けてください。ドキシサイクリンの効果が弱まってしまいます。
カルシウムや鉄分のサプリメント
ドキシサイクリンを服用する日は、カルシウムや鉄分のサプリメントを控えてください。ドキシサイクリンの効果が弱まってしまいます。
低用量ピル
低用量ピルの効果が弱まることがあります。不正出血を起こしたり、避妊効果が得られなかったりするかもしれません。
妊婦・授乳婦は服用できない
妊娠中や授乳中の方は、赤ちゃんへ影響が出る可能性があるため、ドキシペップはおこなえません。性感染症が心配であれば、医療機関でご相談ください。
妊娠中の梅毒・淋菌・クラミジア等への感染は、赤ちゃんへも感染が広がるため、危険です。早めに治療しなければなりません。
定期的に性感染症の検査をする
ドキシペップをおこなったからと言って、予防の効果は100%ではありません。知らず知らずの間に、性感染症にかかっていることもあり得ます。
定期的に、性感染症の検査をおこなうことをおすすめしています。感染していた場合、ドキシペップの服用方法では耐性菌へ変化するリスクが高いです。耐性菌になると、治療が難しくなります。
1〜数か月に1回は、性感染症の検査をしましょう。
不安な方はご相談を
「ドキシペップ」は、コンドームなしの性行為(腟内挿入・オーラルセックス・アナルセックス)により「性感染症にかかったかも…」と心配になったあとからでもおこなえる「性感染症の予防策」です。
これまで「性感染症を予防するには、コンドームの着用以外にない」と思われていましたが、ドキシペップが新しく報告されたことで、さまざまな性感染症のリスクを減らせる可能性が出てきました。効果は100%ではありませんが、リスクのある性行為から72時間以内の服用で、ある程度の効果が期待できます。いざという時にはご相談ください。
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