20代前半に多い!淋病(淋菌感染症)の原因・症状・治療法について徹底解説
性感染症として知られる「淋病」。名前は知っているけれど、どんな病気なのか知らない人も多いのではないでしょうか?
この記事では淋病の原因や症状、治療法など徹底解説。近年は減少傾向にあるものの、ポピュラーな性感染症である淋病についてよく知り、早期発見や治療・予防に役立てて下さい。
感染者は減少傾向にある性感染症「淋病」
淋病は男性の患者数が多く、かつては性感染症の中でもクラミジアに次いで感染者数が多かった性感染症です。
平成14年(2002年)をピークに減少傾向ではありますが、全体で見ると10代後半から30代の性活動が盛んな年代に多く、男女ともに特に20代前半に多く見られる性感染症です。
女性の方が患者数が少ない傾向にありますが、男性に比べて症状が出にくいため、感染になかなか気付かず受診に至っていないためだと考えられます。
淋病の原因と特徴
淋病は淋菌(Neisseria gonorrhoeae)が原因菌となり発症する病気で、正式名称は淋菌感染症と言います。
淋菌は粘膜を介して感染するため、人から人へ性的接触によって感染が拡大しやすい病気です。
不特定多数におよぶセックスパートナーとの性行為や、コンドームを使用せずに性行為を行う以外に、オーラルセックスによって感染が広がるのも淋菌感染症の特徴です。
淋菌の特徴
淋菌は本来とても弱い細菌です。乾燥や温度変化に弱く炭酸ガス要求性の性質を持つため粘液以外では殆ど生存できません。
そのため粘膜の接触と言ってもキスや回し飲み程度の接触であれば感染リスクは低いとされ、理論上唾液による感染リスクは否定できませんが、唾液による感染に関する研究データ等は報告されていません。
抗菌薬への耐性を持っている淋菌も
近年減少傾向にある淋病の中ですが、特に問題とされているのが抗菌薬への耐性を持った耐性淋菌の存在です。
耐性化が進んでいくと、効果的な抗菌薬が減っていき次第に治療が困難になってしまう恐れもあります。
淋病の感染経路
淋病の原因菌となる淋菌は粘液に潜んでいるため、感染を引き起こす部位は咽頭、直腸、尿、陰部分泌物、膿などと特定できます。
これらの感染を引き起こす部位から考えられる感染ルートは以下の通りです。
性行為での感染
淋菌は性行為による感染経路が最も多く、性感染症の1つとされています。
コンドームを使わずに性行為をした場合の感染率は30~50%。膣性交のみの場合は23.8%、口腔性交のみの場合は43.9%の感染率となり、口腔性交での感染率が高いです。
実際に、男女とも淋病の感染が確認された人の20~30%は咽頭への淋菌感染が確認されています。
性行為には性器同士の接触やオーラルセックス、アナルセックスも含まれ、現在淋菌の感染者数が増えているのは性風俗でのオーラルセックス(フェラチオ)が原因ではないかと考えられています。
出産による母子感染
出産による母子感染も淋病の感染経路の1つで、新生児にとって淋病は失明や命にかかわるリスクもある恐ろしい病気です。
母子感染の中でも出産の際に産道で感染してしまう場合が多く、妊娠中に淋病の感染が確認された場合は出産前に治療して完治するのが望ましいとされています。
その他の感染
淋菌がついた粘液に触れた手で眼を触ってしまうと、眼の粘膜から淋菌に感染してしまうケースも。
その他にも身近に感染者がいる場合は、感染者が使用したタオル類や浴室の床、浴槽の縁などからも感染するリスクについて注意喚起されています。
淋病の症状
続いて淋病に感染した時の症状を、感染部位ごとに紹介していきます。
基本的に淋病は最初に感染した部位にのみ症状が現れることが多いので、心当たりがあれば直ぐに病院へ受診し検査を受けましょう。
性器へ感染した時の症状(女性の場合)
女性の性器に淋菌が感染した場合、以下のような症状が起こることがあります。
- おりものが増える
- おりものが緑黄色になる
- 下腹部の痛み
- 性交痛
- 不正出血
- 外陰部の腫れや痒み
- 頻尿や排尿痛
ここで紹介した症状はあくまで症状が出た場合だという事を理解しておきましょう。
実際の所、淋病に感染した女性の8割は無症状のケースが多く、パートナーが感染したことで検査を受けて初めて感染に気付いたという女性も多いです。
自覚症状なく淋病に感染している女性が複数のセックスパートナーと性行為をして感染拡大してしまう事もあります。
性器へ感染した時の症状(男性の場合)
男性の性器に淋菌が感染した場合、以下のような症状が起こることがあります。
- 尿道から黄白色の粘り気がある膿が大量にでる
- 尿道のかゆみや不快感
- 尿道が熱をもつ
- 排尿痛
- 副睾丸の腫れ
- 軽い発熱
男性は比較的症状が現れやすく、性器が腫れてしまい歩行困難な程の激痛に襲われるケースも。
しかし、近年男性も症状が出ないケースが多く報告されています。
咽喉へ感染した時の症状
咽喉に淋菌が感染した場合、以下のような症状が起こることがあります。
- 喉の痛み
- 喉の腫れ
- 発熱
喉に感染した場合は症状として現れにくく、症状が出たとしても風邪と勘違いしたまま感染を広げてしまうケースがあります。
直腸へ感染した時の症状
直腸に淋菌が感染した場合、以下のような症状が起こることがあります。
- 肛門のかゆみや不快感
- アナルセックス時の痛み
- 激しい腹痛
- 下痢や血便
淋菌が直腸に感染した場合、比較的症状が出やすく激しい痛みを感じることが特徴です。
眼へ感染した時の症状
眼に淋菌が感染した場合、以下のような症状が起こることがあります。
- まぶたの腫れ
- 白目がゼリー状に盛り上がる
- 膿が出る
淋菌が眼に感染した場合、症状が出やすく急速に重症化しやすいのが特徴です。
特に目脂が多く出るため、異常を感じたら直ぐに受診するのが良いでしょう。
淋病が引き起こす病気
様々な部位に感染した淋菌は、さらに他の病気や症状を誘発することも。淋病が引き起こす病気について解説していきます。
【女性器感染】淋菌性子宮頸管炎
女性に起こる病気として多いのが淋菌性子宮頸管炎。淋菌による子宮頸管の炎症で、自覚症状が無い場合も多い病気です。
進行すると卵管炎や卵巣炎を発症し、これらの病気にかかると妊娠し難くなるため不妊の原因病ともされています。
【咽頭感染】淋菌性咽頭炎
オーラルセックス等によって淋菌が咽喉に感染した場合に起こりやすいのが淋菌性咽頭炎です。無症状の場合が多く、風邪と間違えられやすい症状が特徴。
淋菌性咽頭炎が確認された場合、パートナーが性器に淋菌感染を起こしているケースも多いです。
【眼部感染】淋菌性結膜炎
淋菌が眼に感染することで起こる淋菌性結膜炎は、母子感染で最も起こりやすい病気です。産道で新生児が感染した場合、新生児結膜炎と診断されます。
大人の場合、基本的に片目のみ症状が現れますが、新生児がかかると両目に発症するのが特徴。抵抗力の弱い新生児の場合、重症化すると失明する可能性もあります。
成人が淋菌性結膜炎にかかり重症化すると、化膿性結膜炎や角膜の潰瘍、腫瘍、穿孔の他、全眼球炎を引き起こす可能性もある病気です。
【直腸感染】淋菌性直腸炎
アナルセックス等によって淋菌が直腸に感染して起こりやすい淋菌性直腸炎。激しい痛みの症状が特徴です。
炎症が強い間は、アナルセックスや排便の度に激痛に襲われることもあり、強い痛みから病気を自覚し比較的早期発見されています。
【尿道感染】淋病性尿道炎
女性がかかる事もありますが、男性の患者数が多いのが淋病性尿道炎です。
淋菌が尿道に感染することで発症し、感染原因となる性行為から約1週間程度で発症することが多いのも特徴の1つ。
男性の場合、淋菌性尿道炎を放置すると、尿道から淋菌が精巣上体へと流れ込み精巣上体炎を引き起こすこともあります。
【男性器感染】精巣上体炎
精巣の上部にある精巣上体に淋菌が感染して起こる精巣上体炎は、高熱が出て精巣上体が腫れあがります。
精巣上体炎を放置すると、尿道が狭くなる尿道狭窄症を引き起こし男性不妊の原因となることも。
精巣上体炎は発熱や悪寒戦慄、白血球増多症などを伴う場合が多いため、発症後すぐに病気に気付き検査や治療を受けるケースが多いです。
【全身感染】播種性淋菌感染症(DGI)
稀に淋菌が血流にのって巡り、皮膚や間接に感染しておこる播種性淋菌感染症という病気があります。
軽い発熱や関節痛、末端の膿疱性皮膚病変などが主な症状ですが、重症化すると心膜炎、心内膜炎、髄膜炎、肝周囲炎などを引き起こすことも。
血液や心臓の感染症は治療で比較的早期に完治できますが、関節炎は治療に長い時間がかかることも多いです。
その他の淋病が原因となって発症する病気
その他、淋病が原因となって発症する病気は以下の通りです。
女性 | 卵管炎、卵管狭窄、腹膜炎、バルトリン腺炎、子宮内膜炎、急性膀胱炎、肝周囲炎、骨盤内感染症、不妊症 |
---|---|
妊娠中の女性 | 子宮外妊娠、流産、早期破水、早産、低体重児出産 |
男性 | 前立腺炎、無精子症、不妊症 |
男性・女性 | 敗血症、心内膜炎、髄膜炎、関節炎、尿道炎 |
男女共に淋病が引き起こす病気によって不妊症になるケースも多いので、感染が疑われる場合速やかに検査を受けるのが良いでしょう。
淋病の検査方法
淋病の検査には【即日簡易検査、精密検査、即日精密検査】の3種類があります。
●即日簡易検査
精密検査に比べると精度が低いため、明らかな淋病症状が出ている場合に有効な検査方法。15分程で結果が判定できる。
●精密検査
無症状でも検査できるため、パートナーが淋病に感染した場合等症状が無く感染が疑われる場合に有効な検査方法。外部機関に検査を委託する場合も多く、結果判定まで2~7日間程必要。
●即日精密検査
精密検査と同じく無症状の感染疑いがある場合に有効な検査方法。専用の設備を備えた病院でしか行えない。当日から翌日までに検査結果が判定できる。
また、検査に必要な採取物は以下の通りです。
感染が疑われる部位 | 検査に必要な採取物 |
---|---|
女性器 | 膣分泌物(膣ぬぐい液)、膿 |
男性器 | 尿(初尿)、膿 |
咽頭 | うがい液(咽頭周辺のぬぐい液) |
直腸 | 肛門分泌物(肛門周辺のぬぐい液) |
女性器への感染が疑われる場合、生理中は検査ができないため注意しましょう。また、咽頭等に感染した場合風邪と勘違いして抗生剤を服用してしまうこともありますが、抗生剤を服用した状態で淋病の検査をすると正確な判定ができません。もし検査前に抗生剤を服用してしまった場合は、事前に医師へ相談しましょう。
淋病の治療方法と治療期間
淋病は適切な治療と確認検査で完治が可能な病気です。感染が疑われた時点で検査や治療を行うことが、感染拡大や重症化を防ぐことに繋がります。
様々なトラブルやリスクを回避するためにも、適切な治療を受けましょう。
治療方法
淋菌に有効なのは抗生剤によって淋菌を撃退する治療方法です。点滴での処置や、筋肉注射、経口による抗生剤の服用など、症状や合併症などを考慮して医師が判断します。
淋菌に有効で保険適用の薬はセフトリアキソン(ロセフィン)とスペクチノマイシン(トロビシン)の2つですが、まれにこれらの薬に耐性を持つ淋菌も。その場合は、保険適用外の抗生剤を使って治療を行うケースもあります。
治療期間
治療期間は症状や合併症によって異なります。合併症がない場合は1回の点滴で治療が終わることもありますし、1~7日間にかけて筋肉注射や静脈注射による治療を続ける場合も。
淋菌が他の病気を引き起こしている場合には、抗生剤の服用も続きます。淋病は症状が進行するにつれて治療が困難になるケースもあるため、やむを得ない事情で治療に時間をかけられない場合は、その旨も含めて医師としっかり相談するのが良いでしょう。
治療中の注意点
淋病の治療で最も注意すべきなのは、治療を中断してしまわない事です。
治療を中断することで、淋菌が使用した抗生剤に耐性を持ってしまうケースも多く報告されています。
特に経口での抗生剤服用を指示された場合、症状がなくなっても副作用等が現れない限りは必ず処方された薬を最後まで服用しましょう。
治療費の相場
治療費は病院によって様々ですが、一般的な淋病の治療費相場は以下のとおりです。
診療費 | 3,000~5,000円 |
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検査費 | 4,000円~ |
薬代 | 3,000円~ |
全て保険適用前の相場なので、保険適用されるともう少し金額が抑えられる場合も。
初診料が加えられる病院も多く、検査や薬代も検査内容や使用する薬によって異なります。
「どの位の金額がかかるのかな?」と不安な場合は、事前に病院に問い合わせてみましょう。
当院の診療料金はこちらからご確認ください。
淋病の予防方法
淋病は予防がとても重要です。再発予防と感染予防で、「人に移さない」「自分が移らない」という意識を高めましょう。
完治しているか再検査で確認する
淋病は一度感染しても完全な免疫等はできず、再感染する病気です。パートナーと同時に治療を行わない事で、淋病を移し合うケースも確認されています。
一度感染してしまった場合には、必ず再検査をして完治しているか確認することが重要です。再検査は治療後最低1週間空け、その間性行為や感染リスクの高い行動は控えておくことも大切です。
性行為にはコンドームを正しく着用する
淋病は粘液の接触により感染するため、他の性感染症同様コンドームの利用が一番の感染対策になります。コンドームを正しく着用して性行為を行いましょう。
オーラルセックスやアナルセックスの際も、同様にコンドームを利用することで性器以外の感染予防にも繋がります。
まとめ
淋病は重篤な症状や深刻な不妊リスクを引き起こすケースがあることも報告されているため、感染者を減らす事が最も重要。
感染の疑いがある場合はパートナーと一緒に受診し、適切な予防で淋病の感染を防ぐことも大切ですね。
当院では、性感染症の検査・治療を実施しておりますので、気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。