急増中の梅毒!完治するの?梅毒の症状・原因・治療法について徹底解説
性感染症の1つである梅毒。名前を聞いた事があるという人や、ひと昔前は死に至る病だったと知る人も多いでしょう。性感染症の中でも知名度の高い梅毒が、近年増加傾向にあることはご存知ですか?
この記事では、梅毒について詳しく紹介。梅毒の症状や原因、治療法、感染経路や予防方法についても詳しく解説しています。
「梅毒がどんな病気なのか知りたい」
「気になる症状がある。これってもしかして梅毒?」
「パートナーが梅毒と診断された。自分は?治療方法はあるの?」
という不安や疑問を感じている人は、ぜひ参考にしてみて下さい。
梅毒とは
性感染症であることから、江戸時代には遊女のかかる病気として知られてきた梅毒。長い潜伏期間を経て水面下で重症化していく性質から自覚がなく他人に感染させてしまい大流行が起きたことも。治療法が確率されるまでは不治の病とされ、たくさんの人を死に追いやった恐ろしい病気でもあります。
現代では完治可能な病気
世界で最初に梅毒の大流行が記録されたのは1490年代半ばのイタリア・ナポリ。コロンブスがアメリカ大陸から持ち帰ったとされたことから「悪魔のおみやげ」と呼ばれていたそうです。有効な治療法が見つからない中、長く不治の病とされてきました。効果的な治療方法が広まったのは、第二次世界大戦後なので1945年以降のこと。梅毒は約450年に渡り、人々を恐怖に陥れてきました。
医療の発達した現代では梅毒で死に至ることは殆どなく、発見が遅れることさえなければ比較的簡単に治療ができる病気。重度にならなければ完治も可能です。歴史の背景から梅毒は難病のイメージが強いですが、病気のサインを見逃すことなく早期に適切な治療を施せばそれ程怖い病気ではありません。
2010年以降増加傾向にある
治療方法が確立されたことで感染者が減っていった梅毒ですが、2010年(平成22年)頃から徐々に感染者数が増加傾向に。国立感染症研究所の統計によると2010年(平成22年)から2018年(平成30年)にかけて梅毒感染者が急増。2019年(平成31年~令和2年)以降はやや減少傾向にあったものの2021年(令和3年)には再び増加し始め、2022年(令和4年)には感染者数が過去最高を記録しました。
女性は特に20代の感染者が突出して多い一方で、男性は20代から50代まで広く感染者が出ています。感染者増加の背景には性風俗産業の発展や、外国人観光客の増加などがあるという報告も。梅毒は潜伏期が長いため、感染の自覚がなく複数人と性的接触を行ってしまうことで感染者を爆発的に増やしてしまいます。
梅毒の原因と感染経路
続いては、梅毒の原因と感染経路について解説していきます。
原因
梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が引き起こす感染症です。病変した皮膚や感染者の粘膜に多く存在しているため、性行為やそれに準ずる行為で感染を起こしやすく一回の性行為で感染する確率は20%と言われています。
感染経路
梅毒は性行為やそれに準ずる行為によって、粘液に含まれた梅毒トレポネーマが僅かな傷口などから体内に侵入することで感染します。
通常のセックスの他、オーラルセックス、アナルセックス、キスで感染することも。特に、わずかな刺激でも傷付きやすい直腸を用いるアナルセックスは、感染リスクが高いと言われています。
性的接触による感染以外にも、梅毒は生まれてくる赤ちゃんに感染する母子感染を起こす場合があります。生まれてくる赤ちゃんは先天梅毒にかかり胎児の時期は流産リスクを高め、無事出産を迎えても様々な症状や障害を起こすケースがあります。妊婦が梅毒に感染している場合、迅速な治療が必要です。
梅毒は空気感染せず、日常的な接触等で感染する確率がかぎりなくゼロに近いと言われています。身近に梅毒感染者がいた場合、正確な知識を持って感染対策を行うようにしましょう。
HIV感染者は梅毒感染リスクが上昇
ヒト免疫不全ウイルスを原因とするHIV。梅毒と同じく性感染症として有名な病気ですが、HIVに感染すると梅毒の感染リスクが上昇すると言われています。そのため、梅毒に感染していることが分かると、HIV検査を受けるよう医師に提案されるケースも多いそうです。
中には梅毒感染者の約8割がHIVにも重複感染(1人に2つ以上の感染症が起こること)を起こしているとの調査報告もあります。
HIV感染者はウイルスや細菌に対する免疫力が低下してしまう病気なので、梅毒トレポネーマに感染しやすいことが原因と言えるでしょう。HIVと梅毒を重複感染すると、梅毒の進行が早く比較的重症化しやすいというデータもあります。
第1期梅毒の症状
梅毒は初期から末期まで4期に分かれて分類されており、感染してから約3週間~3ヵ月の間に起こるのが第1期梅毒の症状です。性器・肛門・唇などに「初期硬結(しょきこうけつ)」と呼ばれる硬いしこりができます。徐々に初期硬結の中心が爛れてへこんだ潰瘍ができ「硬性下疳(こうせいげかん)」と呼ばれる状態に変化するのが特徴です。
初期硬結は3mmから3cmほどの大きさで、硬性下疳の病変部は特に細菌が多く存在しています。第1期梅毒の症状は痛みや痒みなどの自覚症状がないため、梅毒に感染していると知らないまま性的接触によって他人に感染させてしまうケースも。約1ヶ月で初期硬結も硬性下疳も自然に消えてしまうため、症状が出る部位によっては感染に気付きにくくなります。
【初期症状】女性に現れる梅毒の症状
女性の場合は、子宮頸部・大陰唇・小陰唇周辺などに症状が現れます。潰瘍ができているのに沁みるような痛みなども感じないため、しこりを感じたら注意が必要。しこりを目視して硬性下疳になっていないか確認しましょう。中には、鼠径部(股の付け根部分)が腫れる症状が出る人もいるようです。
【初期症状】男性に現れる梅毒の症状
男性の場合は、亀頭・陰茎・亀頭と陰茎の間(冠状溝)・性器周辺の皮膚などに初期硬結ができやすいのも特徴的です。女性に比べると、比較的性器に症状が出た場合でも確認しやすいため、怪しいしこりを見つけたら早めに受診を心掛けましょう。
第2期梅毒の症状
第1期梅毒の症状が沈静化して3ヵ月以上経過した頃、しこりができたことも忘れたタイミングで現れるのが第2期梅毒の症状です。
発熱・倦怠感・頭痛・リンパ腺の腫れ・のどの痛み・筋肉痛・脱毛(梅毒性脱毛)・湿疹(梅毒性バラ疹)、小さく平たいイボ(扁平コンジローマ)、口内炎のような粘膜の白疹(梅毒性粘膜疹)といった様々な症状が全身に現れます。
梅毒は血液を通して全身に原因菌が行き渡るので、全身に症状が出やすい病気。第1期梅毒と同じく現れた症状は半年ほどかけて鎮静化、半年を過ぎる頃には症状がなくなっているケースが多いです。
症状がなくなっても感染力は残り、特に梅毒性粘膜疹で口内が病変している場合はキスやオーラル接触で感染しやすいので注意しましょう。
第3期梅毒の症状
最初に感染した時から3~10年以上経過し、重症化している状態が第3期梅毒です。全身にゴム腫と呼ばれるゴムのような触感の硬いしこりが出ます。皮膚だけでなく、骨、筋肉、内臓など全身に現れるゴム腫は、周辺の細胞を破壊してしまい一気に梅毒を悪化させるのが特徴です。
鼻骨の周りに出来たゴム腫が、周囲の細胞を破壊して鼻の欠損に繋がることも。治療法が確立されている現代では、第2期梅毒の状態で病状が発見されることが多いので第3期梅毒まで重症化していく例は殆どありません。
第4期梅毒の症状
最初の感染から10年以上経過している末期状態が第4期梅毒。梅毒によって心臓血管や中枢神経が侵されてしまい動脈瘤や大動脈破裂などの症状を引き起こすことも珍しくありません。
神経障害を起こすケースも多く報告されており、悪化し続けた結果死に至ります。第4期梅毒まで重症化してしまうと病状の完治は極めて難しく、治療によって命を取り留めたとしても何らかの後遺症が残ることが多いと言われています。
梅毒の検査方法
梅毒は血液検査や潰瘍などから取り出した細菌を培養して感染しているかを判定。それぞれの方法で、梅毒トレポネーマへの感染が認められれば梅毒と診断されます。
検査を受ける際は、皮膚科、感染症科、泌尿器科、産婦人科などの医療機関を受診して下さい。自治体によっては保健所で無料検査を受けられるケースもあるため、住まいの自治体に問い合わせてみるのも良いでしょう。
梅毒トレポネーマは感染後すぐだと正確な検査結果が出にくく、感染している状態でも細菌が検知されないことがあります。梅毒感染者と性的接触をした時点から4週間待ってから検査を受けると良いでしょう。
検査を受けるまでの間は感染していた時のことを考えて、他の人との性的接触は控えるようにして下さい。
梅毒の治療法
梅毒はペニシリン系の抗菌薬を用いた治療が行われます。不治の病と呼ばれた歴史や重症化した際の病状の酷さから難病のように思われがちですが、ペニシリン系の抗菌薬を用いた処置さえ行われれば比較的簡単に治療できる病気です。
第1期梅毒の場合は2~4週間程、第2期梅毒の場合には4~8週間程の治療期間で完治するケースも。第3期梅毒まで進行していても12週前後で治療できると言われています。治療自体も1日3回の服薬を期間内続けるだけなので、感染者にとって負担の少ない治療方法です。
梅毒は治療を受けなくとも病状が一時的に回復したように見え、水面下で悪化していく病気です。治療を始めて症状が治まったからといって途中で服薬を止めてしまうと、症状が悪化しながら再発してしまうことも。梅毒の治療には医師の指示に従って、処方されたペニシリン系抗菌薬を飲み切ることが何よりも大切です。
一度に必要な薬全部が処方されるケースは殆どなく、多くの場合医師が途中経過を観察しながら必要分の処方を行います。服薬と同じく通院のタイミングも医師の指示に従いましょう。
梅毒の治癒判定
梅毒の治療を終えたら、血液検査で治癒判定を行います。RPR法という検査方法で血中の梅毒トレポネーマ抗体量を測定、日本感染症学会のガイドラインで定められた陰性を示す数値を基準として判定を行うのが一般的です。
しかし、理想的な陰性を示す数値となるケースは少なく、治癒判定に不安が残る場合には長めに治療を行うことがあります。梅毒の治癒判定は様々な条件や数値から導き出すため複雑です。検査したからといって簡単に治癒したと言い切れるものではないため、治療が少々長引くとしても医師の指示に従いしっかりと完治させることが大切です。
梅毒は再感染することも
梅毒は完治したとしても免疫を持つことができないため、再び梅毒感染者と性的接触を行うと再感染することがあります。
一度感染することで血中に梅毒トレポネーマの抗体ができることはありますが、再感染を防ぐ程ではありません。梅毒が完治したと同時に、再感染しないよう予防を徹底しましょう。
梅毒を予防するには
梅毒は性的接触による感染が最も多いと言われています。普段から性交の際にはコンドームを着用して、性感染症の予防を行いましょう。
しかし、梅毒はキスなどでも感染リスクがあると言われているためコンドームを使用したからといって予防が十分とは言えません。
病変している部分が見受けられた場合は性交渉をしないようにすることも重要。梅毒に感染しても完治している場合は性的接触をしても問題ないので、パートナーが梅毒になった場合には完治の治癒判定がでるまで性的接触は控えておきましょう。
まとめ
2021年には過去最高の感染者数を記録した梅毒。しかし梅毒に感染してしまった際にも早期治療を行うことで完治が可能な病気です。症状が現れた場合や、感染の可能性がある場合には速やかに医療機関を受診して検査を受けましょう。適切な処置や治療で治る病気なので、必要以上に怖がらず医師の指示に従って完治を目指す様にして下さい。
当院では、梅毒の検査を実施しておりますので、気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。