低用量ピルの副作用で血栓症が起こる原因や確率は?注意したい初期症状と予防法も紹介!
避妊や生理にまつわるトラブル改善に効果が期待できる低用量ピル。
女性にとって嬉しい効果がある反面、副作用について気になるという人も多くいます。
低用量ピルが原因で起こる副作用の中でも、特に心配されるのが血栓症です。
この記事では低用量ピルの副作用で起こる血栓症について原因や発症する確率、初期症状、予防法などを紹介します。
低用量ピルを服用している人や、これから服用しようと考えている人は参考にしてみて下さい。
避妊や生理にまつわるトラブルに用いられる低用量ピルとは
低用量ピルとは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが配合された避妊薬です。
正しい方法で服用した場合97%以上の確率で避妊に効果が期待できる他、月経移動、生理痛の軽減、ニキビの改善などにも処方されます。
最近では、月経困難症やPMSなど生理にまつわる病気の治療や子宮がん、骨粗鬆症などの予防として処方されている薬です。
世界では普及率が高く、多くの女性がさまざまな理由で服用しており、日本でも避妊や治療などにピルを服用する女性が増えてきています。
低用量ピルの副作用
避妊や生理にまつわるトラブル、病気の治療などにも利用される低用量ピルですが、副作用のリスクについても事前に知っておく必要があります。
低用量ピルの主な副作用には以下の症状が挙げられます。
- 軽い吐き気
- 頭痛
- 胸の張り
- 下腹部痛
- 下痢
- むくみ
上記で紹介している副作用は一時的な症状であることが多く、暫く低用量ピルの服用を続けると自然に症状が治まっていくケースも多いです。
これらの副作用はマイナートラブルとも言われる軽度の症状ですが、中には命に関わるものあります。
それが血栓症です。血栓症は低用量ピルの副作用の中でも、特に注意すべき症状のひとつです。
低用量ピルを服用するなら、血栓症について知っておく必要があるでしょう。
血栓症とは
血栓症の正式名称は静脈血栓蓋栓症(VTE:Venous thromboembolism)と言います。
血栓症は、血液中にできた血栓と呼ばれる塊が血管を塞いでしまうことで起こる疾患です。
血栓(血液中にできた塊)が肺や脳で静脈を詰まらせてしまうと、重篤な症状を引き起こしてしまうことがあります。
血栓症を引き起こす要因には体質や状況などさまざまなものがあり、特に以下の状況では血栓症リスクが高くなると言われています。
- 血液が固まりやすい状態(もしくは体質)
- 血液が停滞している状態(長時間動かない状態で引き起こされる)
- 血管内皮の損傷(高血糖・高血圧・血中脂肪の上昇などが原因で引き起こされる)
血栓症が原因で起きる症状として有名なものに、エコノミークラス症候群があります。
飛行機のエコノミークラスで多く発症するため、このような名前で呼ばれていますが正式名称は急性肺血栓塞栓症です。
エコノミークラス症候群では、動きが制限されるエコノミークラスを利用したフライトで、長時間同じ体勢を続けると血液が停滞し血栓症を引き起こされます。
それでは、なぜ低用量ピルを服用することで血栓症リスクが上がってしまうのでしょうか?続いて、低用量ピルと血栓症の関係について解説していきます。
低用量ピルを服用することで血栓症リスクが上昇する理由
低用量ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンが配合されているホルモン剤です。
2つのホルモンの内、卵胞ホルモンには血液を固まりやすくする作用があります。
本来なら卵胞ホルモンによって血液が固まりやすくなってしまっても、その他のホルモンとバランスを取って血液が固まるのを防いでいます。
しかし、低用量ピル服用中は人工的ホルモンを取り込んでいるため自然なホルモンバランスではなく、他のホルモンとバランスを取り合うことができません。
その結果、血液が固まりやすく血栓症リスクを高めてしまうことがあると言われているのです。
低用量ピルで血栓症を発症する確率
低用量ピルを服用することで血栓症リスクが高まることは医学的に証明されていますが、血栓症は元々誰にでも起こり得る疾患です。
血栓症は、低用量ピルを服用していない人でも年間1万人に1~5人の確率で発症すると言われています。
低用量ピルを服用した場合、1万人に対して3~9人の確率で血栓症を発症すると言われているため、低用量ピルを服用しない人と比較すると確かにリスクが高くなると言えるでしょう。
しかし、妊娠中および産後12週間の血栓症を発症する確率は1万人当たり40~65人という統計結果が出ています。つまり、低用量ピルを服用している時よりも、妊娠中や産後の方が遥かにハイリスクです。
さらに、血栓症の中でも命に関わる重篤な症状を引き起こす肺血栓症は、約1割の確率で起こるとされ、残り9割は下半身の血管が詰まってしまう深部静脈血栓症です。
深部静脈血栓症は血栓が下半身の血管を塞いでしまう疾患で、重篤な血栓症を引き起こす可能性のある前段階と言えます。
早期に発見できれば比較的軽症で済むことが多く、薬物療法で治療ができる疾患です。
低用量ピルの服用によって重篤な血栓症を発症する確率は限りなく低いと言えますが、万が一発症した際に早期発見・治療を受けられるよう、血栓症への理解を深めておくことが大切です。
参考:日本産婦人科学会
低用量ピルによって血栓症を起こしやすいタイミング
低用量ピルの副作用で起こる血栓症は、必ずしも服用直後に起こるとは限りません。
血管を詰まらせてしまう程の血栓ができるには時間がかかるため、服用開始後しばらくしてから発症する人の方が多いと言えるでしょう。
低用量ピルを服用している間、特に血栓症を起こしやすいのは服用開始から3ヵ月以上半年未満の時期だと言われています。
この期間は特に血栓症を起こしやすいと言われているため、体調の変化などに注意する必要があります。
服用を開始して半年以上何事もなく経過したのであれば、その後低用量ピルの副作用による血栓症が起こる可能性は低いと言えるでしょう。
ただし、服用していた低用量ピルを一度中断し、再度服用を始める場合には注意が必要です。
低用量ピルの服用を再開すると、再開後3ヵ月以上半年未満は血栓症のリスクが再び高まると言われています。
【低用量ピルの処方を受けられないことも】体質や持病による血栓症のリスク
血栓症は、ピルを服用していない人にも起こり得る病気です。それは、体質や病気の影響で既に血栓症リスクが上昇していることも原因のひとつとして考えられています。
自分が血栓症リスクの高い体質なのかを理解しておくことや、血栓症リスクが高い場合低用量ピル以外の選択肢があることを知っておくことも大切です。
血栓症リスクの高い人の特徴
血栓症は年齢や体質によってもリスクが高まるため、元から血栓症リスクの高い人は低用量ピルの処方を受けられない場合があります。
以下のような特徴を持つ人は血栓症リスクが高い傾向にあるため注意が必要です。
- 35歳以上の人
- タバコを1日に15本以上吸う人
- 肥満体質の人
- 高血圧の人
- 前兆を伴う偏頭痛の診断をされている人
- 肝機能障害を起こしている人(過去に起こしたことのある人)
- 心疾患を持つ人
- 腎疾患を持つ人
30~34歳の人と比較すると、35歳以上の人は1.18倍以上の血栓症リスクがあるとされ、45歳以上になると2倍にまで上昇します。
また、肥満体質の人はBMIが30を超えた場合、血栓症リスクが5倍まで上昇するという研究結果が発表されています。
その他、体質や疾患の有無によっても、低用量ピルの服用にリスクがある場合も考えられるため、医師にしっかりと相談をして処方を検討してもらう必要があるでしょう。
血栓症リスクの高い人が服用できるピルもある
血栓症リスクが高い人は、低用量ピルを処方してもらえないことが多いです。それでも避妊や病気の治療にピルを服用したい場合、ミニピルという選択肢もあります。
ミニピルは血栓症のリスクを高める卵胞ホルモンが配合されていないピルです。
黄体ホルモンだけで避妊や病気の治療に必要なホルモンバランスを調整するため、血栓症リスクの高い人でも服用が可能。
血栓症の初期症状
血栓症は早期発見・早期治療が何より大切な疾患です。
特に低用量ピルを服用して半年に満たない人は、体調の変化をよく観察しておくことが大切でしょう。
血栓症の初期症状には以下のような症状が挙げられます。
- 足の痛み
- 足の痺れ
- 足の浮腫み
- ふくらはぎのだるさ
- 刺すような胸の痛み
- 頭痛
- 眩暈
- 激しい腹痛
- 目が急に見えにくくなる
低用量ピルを服用している人は、これらの症状を覚えておきましょう。
もしも上記の症状が現れたら、直ちに低用量ピルの服用を止めて、かかりつけの医師に症状を相談して下さい。
血栓症の予防方法
エコノミークラス症候群のように、血栓症は【固まりやすい血液・血液の流れが滞る・血管内皮が損傷する】という3つの要素が重なると発症リスクが急上昇します。
低用量ピルを服用している人は、特にこれらの状況を避けることが血栓症の予防に繋がります。
着圧ソックスを履く
長時間同じ体勢が続くようなデスクワークをしている人は、血液の流れが滞りがちです。
特にふくらはぎは第二の心臓と呼ばれる程、大切な部分。ふくらはぎは筋肉の収縮により下半身の血液を心臓に向かって押し上げる役割を果たしています。
適度に歩いたり、屈伸したりと、体を動かしてふくらはぎの筋肉を収縮させることができれば良いですが、それが難しい人は着圧ソックスを履くのがおすすめです。
下半身に圧力をかける着圧ソックスの働きが、下半身から心臓へと血液を押し上げるサポートをしてくれます。
特に、段階的に強い着圧をかけられるものが良いでしょう。
こまめに水分補給をする
低用量ピルに含まれる卵胞ホルモンには血液が固まりやすくなる副作用があるため、服用中の水分不足は血栓症リスクを高めてしまう要因の1つ。
体内の水分が不足すると、血液がさらにドロドロになり、血栓ができやすくなってしまいます。
しかし、やみくもに水分を過剰摂取すると体が冷えたり腎臓に負担をかけたりする原因になります。
1日に1.2~2リットルの水分を意識的に摂取するよう心掛けましょう。
特に寝ている間は水分不足に陥りがちです。寝起きや運動をした後、入浴の前後など水分が失われているタイミングでこまめに摂取すると、飲んだ水がしっかりと吸収されます。
ストレスや疲労を溜め込まないようにする
本来、血栓は誰にでもできやすく、血栓症を引き起こす程大きな血栓ができるのは稀なことだと言われています。
その理由は、血栓は必要な部位にでき不要になれば自然と溶けてなくなってしまう性質を持っているためです。
血栓はそもそも、血管内の傷を修復するためにできるものです。
血管内の傷口に集まった血小板が瘡蓋をつくり、傷口が塞がれば溶けてなくなってしまいます。
最近の研究では強いストレスや疲労を感じると血小板が過剰に働きすぎることが分かっており、過剰にあつまった血小板により溶けきれなかった血栓が血栓症を引き起こしてしまう可能性があるとも言われています。
普段からしっかりと心身共に休息を取り、ストレスや疲労を溜め込まないよう心掛けましょう。
まとめ
低用量ピルは避妊や女性特有の生理トラブルを改善し、QOLを上昇させる薬として世界中で服用されています。
しかし薬である以上、副作用は付き物。
副作用を危険視するだけでなく、副作用と服用することで得られる効果を比較して冷静に検討してみることが最も大切です。
低用量ピルの副作用による血栓症リスクは、それほど高いものではありません。
低用量ピルを正しく服用し、普段から予防に努めれば、過剰に怖がる必要はないでしょう。
血栓症に対する正しい知識を持ち、万が一初期症状が現れた時には速やかに受診できるよう備えておくことが大切ですね。
当院では、一人ひとりの症状やライフスタイルに合ったピルをご提案し処方いたしますので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。