
アフターピル(緊急避妊薬)は薬局で買える?薬の種類や買い方・市販化についても解説

緊急避妊薬として知られる「アフターピル」は、以前から使用や市販化の是非について活発な議論が行われてきました。
望まない妊娠の可能性がある場合、一刻も速い服用を求められるにも関わらず、これまでの入手方法は複雑であったりハードルが高かったりするという意見も少なくありません。
そこで今回はアフターピルについて、現状の買い方や今後の行方について、様々な角度からの意見を紹介していきたいと思います。
あわせて、2025年8月に承認されたアフターピルの市販化(OTC医薬品化)についても詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アフターピル(緊急避妊薬)とは?
アフターピル(緊急避妊薬)とは、性行為の後72時間以内に服用することで高い確率で妊娠を防ぐ効果が期待できる薬です。無防備な性行為から服用時間が早ければ早いほど高い効果が期待でき、時間が経つにつれて効果は低下しますが、最近は120時間以内でも高い避妊効果が期待できる最新のアフターピルもあります。
アフターピルは、内服すると排卵を止める、もしくはタイミングを遅らせることができるため、妊娠を防ぐのに効果があるとされています。妊娠前に防止するための薬なので、中絶とは異なると定義されています。
他の避妊方法に失敗したり、性暴力の被害にあった時に有効な避妊方法です。
アフターピルの大きな特徴として、性行為の後なるべく早く服用しなければ避妊効果が低下していく点が挙げられます。そのため、アフターピルを入手したい状況では緊急性が求められる場合が多いです。
アフターピル(緊急避妊薬)の種類
アフターピル(緊急避妊薬)には以下の3種類があります。
ノルレボ錠1.5mg
ノルレボ錠は世界でもっとも服用されているアフターピルと言われており、WHOも緊急避妊を行う際の必須薬として指定している薬です。
国内における臨床試験では、性交以後72時間以内に服用した結果、63例のうち妊娠阻止率が81.0%でした。しかし、有効成分であるレボノルゲストレルは時間経過と共に血中濃度が薄まっていくため、性行為後できる限り早いタイミングで服用することが推奨されています。
参考:ノルレボ錠1.5mg (aska-pharma.co.jp)
レボノルゲストレル錠1.5mg
レボノルゲストレル錠は、2019年に販売が開始されたノルレボ錠のジェネリック医薬品です。有効成分としてレボノルゲストレルを含み、性行為後72時間以内に服用することで高い妊娠阻止率を発揮します。
ノルレボ錠と同様に、性行為後なるべく早いタイミングの服用が推奨されており、ジェネリック医薬品のため比較的安価で入手できるのが特徴です。
参考:レボノルゲストレル錠1.5mg「F」 (pmda.go.jp)
プラノバール
プラノバールは1970年代から世界で服用されている緊急避妊薬です。2回に分けての服用が必要なことやノルレボ錠、レボノルゲストレルに比較すると妊娠阻止率が低い事から、現代では緊急避妊薬としての需要は減りつつあります。
プラノバールは、中用量ピルとして機能性子宮出血や月経困難症、月経周期異常などの婦人科系疾患に処方されることもある薬剤です。
参考:プラノバール (プラノバール配合錠) (kegg.jp)
エラワン(未承認薬)
日本で承認されているアフターピルは「ノルレボ錠」「レボノルゲストレル」「プラノバール」の3点のみ(プラノバールは緊急避妊薬ではなく、あくまでヤッペ法に用いられる薬剤という立ち位置)ですが、世界では他にも安全性の承認されているアフターピルが多々あります。
そのひとつに、「エラワン」があります。エラワンは日本で承認されている3つのアフターピルとは異なり、性行為後120時間以内の服用で高い妊娠阻止効果が期待できます。諸外国では、主流のアフターピルとして市販もされているケースが多いですが、日本では今だに承認される見通しが立っていません。
しかし、エラワンの有効性や性行為後72時間以上経過してしまった方への緊急避妊の必要性などを踏まえ、未承認薬でありながらも処方を行うクリニックが増えています。
参考 当院のエラワン紹介ページ
ウルピサド(未承認薬)
ウルピサドは、エラワンと同じく未承認薬です。エラワンのジェネリック医薬品であり、エラワン同様、性行為後120時間以内に服用することで高い避妊効果が期待できます。
ウルピサドの有効成分であるウリプリスタール酢酸エステルはエストロゲンを含んでいないため、エストロゲンを含む医薬品の摂取が難しい人におすすめのアフターピルです。
未承認薬ということもあり、日本での取り扱い数はそう多くありませんが、エラワン同様に、従来の緊急避妊のボーダーラインである72時間を超えてしまった人にも効果が期待できるため、取り扱うクリニック数は増加傾向にあります。
アフターピル(緊急避妊薬)の副作用
アフターピルの(緊急避妊薬)の副作用として、主に以下の症状が報告されています。
消退出血(生理様出血)、不正出血、倦怠感、頭痛、悪心、眠気、めまい、不安感、下腹部痛、下痢、嘔吐など
特に、頭痛、消退出血、不正出血は比較的多くみられる副作用の症状です。
これまでアフターピル(緊急避妊薬)は処方箋が必要な医療用医薬品だった
思わぬ避妊の失敗やトラブルによって、アフターピル(緊急避妊薬)を今すぐ必要としている人もいるでしょう。しかし、2025年8月時点の日本ではアフターピルを薬局で購入することはできませんでした。アフターピルの処方には医師の診察が必要で、薬を入手するためには必ず病院へ行かなければいけなかったのです。
アフターピルは2011年に日本で初めて承認された薬で、医師の処方によって入手することができます。日本では比較的最近になって承認された薬ですが、海外では20年以上前から使用されており、副作用が少なく安全性が高いとされています。
アフターピルは保険適応されないため、高価なのも特徴です。ジェネリック薬品の開発により、価格が低いものも販売され始めましたが、それでも6000円から2万円ほどと、他の薬に比べると高価なのが現状です。
そんなアフターピルですが、2025年8月29日、厚生労働省がアフターピル(緊急避妊薬)の市販化(OTC医薬品化)を承認する旨を発表しました。詳しくは後述します。
アフターピル(緊急避妊薬)が市販化されないことで起こる問題とは
これまでアフターピル(緊急避妊薬)が市販化されないことによって起きてきた社会的問題に「女性の望まない妊娠」と「個人輸入によるトラブル」が挙げられます。
問題1.女性の望まない妊娠
アフターピルが市販化されず、自由診療によって比較的高額で尚且つ医療機関を経由しなければ処方を受けられないことで大きなデメリットを受けるのは、主に未成年と貧困に苦しむ女性です。
未成年で親に避妊が失敗した事を打ち明けられず医療機関を受診できないままアフターピルのタイムリミットである72時間(エラ ワンの場合は120時間)を経過してしまうケースが多く聞かれます。
また、貧困によって診療代やアフターピル代を捻出できない事に悩んでいる内にタイムリミットを迎えてしまうケースも少なくありません。
問題2.個人輸入によるトラブル
日本では市販品として認められてこなかったアフターピルですが、諸外国では既に市販薬品としての販売も随分前から始まっています。特にドイツ、フィンランド、インド、アメリカなどでは性別や年齢を問わず誰でも薬局でアフターピルの購入が可能です。その他、より必要な人の手に届きやすいよう各国の基準に則ってネット販売しているケースもあります。
価格についても市販化されていることで、日本の相場の約半額程度で販売されており、緊急避妊を必要とする女性に広くアフターピルが届くよう制度が整えられています。
一方、市販化が規制されてきた日本では、処方箋を受けずにアフターピルを入手する方法として個人輸入を行いトラブルになるケースがこれまでに度々報告されています。
個人輸入によっては以下のトラブルが少なくありません。
- 個人情報だけを盗まれてアフターピルが届かなかった
- 偽物のアフターピルが届いて避妊効果を得られなかった
- 注文してから到着までに時間がかかり72時間(もしくは120時間)以上経過してしまった
日本で市販化が規制されている薬を入手しようとした背景から、トラブルを相談できずにいる人も少なくありません。また、偽の薬による薬害など個人輸入によるトラブルは実情を把握している以上に多いことが予想されるでしょう。
2023年にアフターピル(緊急避妊薬)の薬局における市販化(OTC化)試験販売が開始
アフターピル(緊急避妊薬)を市販薬化する検討材料として、2023年11月28日から全国145カ所の薬局にてアフターピルの試験販売が行われました。概要は以下のとおりです。
- 地域ごとに条件を満たす調剤実績のある薬局のみで実施
- 研修を修了した薬剤師が販売
- 研修を修了した薬剤師との面談が必須(アンケート・問診表の記入も含む)
- 研修を修了した薬剤師の対面にて服用
- 購入費用 7,000~9,000円程
- 16歳以上で研究参加への同意が必要
(18歳未満は保護者の同意(薬局への同伴)が必要)
この試験販売では、18歳未満の場合は保護者の同意や同伴が必要なことや、16歳未満は購入できないこと、服用する女性が必ず薬局に購入に行かなくていけないこと、購入費用など、諸外国と同様の条件とはほど遠いです。
【最新】2025年8月アフターピル(緊急避妊薬)の市販化(OTC医薬品化)が承認
2025年8月29日、厚生労働省がアフターピル(緊急避妊薬)の市販化(OTC医薬品化)を承認する旨を発表しました。対象となるアフターピルはノルレボ錠のみです。
試験販売の結果などを踏まえて、いくつかの条件が課せられたものの、今後は薬剤師のいるドラッグストアや薬局などで、アフターピルの購入が可能となります。
ただし、市販に関しては現在のところ以下の条件案が挙げられています。
- アフターピルの取り扱いに係る研修を終了した薬剤師が需要者に対面して販売・目前使用を絶対とすること
- 販売業者はプライバシーへの十分な配慮や対応が可能な体制を構築していること
- 販売業者は近隣の産婦人科医等と連携体制を構築していること
- 購入者に対する年齢確認が必要
- 需要者が未成年者の場合、保護者の同意は不要
また、需要者に性暴力や性虐待などの可能性がある場合は、警察や児童相談所などとも連携してアフターピルが犯罪の隠蔽に利用されないよう対策していく旨が挙げられていました。
2025年9月4日時点で、どの程度の価格帯で販売されるのか、いつから市販化されるのかなどは公表されていませんが薬剤師を対象としたアフターピルの取り扱いに係る研修が2025年9月19日からの実施を予定しているため、研修終了後年内には市販化が始まるのではないかという声もあります。
参考資料:厚生労働省|緊急避妊薬のスイッチOTC化について(審査等)
アフターピル(緊急避妊薬)の市販薬(OTC)化において注意すること
ついに日本でもアフターピル(緊急避妊薬)の市販化実現が目前に迫っていますが、購入のハードルが下がる分注意すべき点もあります。
アフターピル(緊急避妊薬)=女性にとっての唯一の避妊方法という誤解が持たないようにする
NHKの番組「おはよう日本」の中で産婦人科医会の前田津紀夫副会長は、緊急避妊薬を服用しても妊娠する可能性はあること、また薬局では他の避妊方法を伝えることが十分にできない、悪用したい人にとっても敷居が下がる、などを理由として慎重派としての意見を述べています。
本記事でも世界でアフターピルの服用が女性の権利として認められていることを紹介してきましたが、そもそも世界では経口避妊薬(ピル)の服用が最もメジャーな避妊方法として認知されている背景があります。
日本におけるピルの服用率は2.9%。一方、アメリカは13.7%、カナダは28.5%、フランスは33.1%と圧倒的に多くの女性がピルによる避妊を実践していることが分かっています。
参照:Contraceptive use by method 2019 : data booklet
ピルは全ての女性にとって避妊を第一の目的として服用されるものではありませんが、先進国と比較し日本はピルの普及が10~15倍近く遅れている事実も考慮すべきでしょう。
まずはピルの服用による計画的かつ女性主体の避妊方法を周知することも大切な取り組みです。アフターピルは、そうした避妊を行うことが出来なかったり性暴力を含む突発的な事態に陥ったりした場合のみ使用されるべきであるという考え方をよく理解しておく必要があります。。
当院においても、アフターピルの処方を求められる方へ、経緯や状況に応じて今後の避妊方法として低用量ピルの服用を検討してみてはどうかとお話することがあります。これは、医師の元で処方を受けるからこそできる、未来の望まない妊娠を避けるために必要な事だと考えています。
3週間を目安に婦人科検診の受診が推奨される/h3>
医療機関でアフターピル(緊急避妊薬)を処方する場合、多くの医師は「アフターピルによる避妊に失敗してしまったケース」についての説明を行うでしょう。同時に、約3週間を目安に妊娠阻止ができているか確認する目的での検診として再受診をおすすめするケースも多いです。
アフターピルの妊娠阻止効果は高いものの100%ではありません。現に、臨床実験においても妊娠阻止率は100%という結果になっていないのです。
本当に望まない妊娠を防ぐのであれば、専門医によるアフターフォローが欠かせないことも事実と言えるでしょう。
今回のアフターピルの市販化においても、薬剤師によって3週間後に婦人科を受診して避妊が成功しているか確認するよう指導を行う案が盛り込まれています。しかし、これらの指導に強制力がないことも事実です。
アフターピルの処方を受けるために一度クリニックへ足を運んでおけば、不正出血や避妊失敗の可能性を感じた際に来院に対するハードルが下がるというメリットもあります。
アフターピルが市販薬化されることで、服用したにも関わらず避妊に失敗してしまった人が取りこぼされてしまうリスクは大きな懸念材料です。
病院でアフターピル(緊急避妊薬)を処方してもらう方法
2025年8月時点で、アフターピル(緊急避妊薬)を処方してもらう方法は2つあります。
産婦人科等医療機関で対面診療によって処方を受ける
産婦人科や婦人科など医療機関で必要な研修を受けた医師に診察を受けることで、アフターピルの処方を受けられます。
産婦人科や婦人科など医療機関では、アフターピルの服用方法、副作用などを説明し、医師の前で服用して診察を終了とするケースが多いです。これは、誤った服用方法や悪用などを防ぐ目的もあります。
オンライン診療にて処方を受ける
インターネットを使用したオンライン診療でも、アフターピルの処方を受けることができます。オンライン診療の場合も産婦人科や婦人科及び必要な研修を受けた医師による診察が必要です。
オンライン診療の場合は、診察をした医療機関から必要な研修を受けた薬剤師の在籍する薬局へ処方箋情報が送付されます。薬局での処方時、必要な研修を受けた薬剤師との対面で薬剤を服用することが原則として定められています。
アフターピル(緊急避妊薬)を服用する際の注意点
アフターピル(緊急避妊薬)を服用する際には以下の点に注意が必要です。
- 必ず医師や薬剤師の指示を受けて服用する
- 持病や体質によっては服用を禁忌とされる場合がある
- 服用後2時間以内に嘔吐した場合は再度服用が必要となる
- 服用後3週間以上経っても消退出血や月経が起こらない場合、妊娠している可能性がある
- 消退出血(不正出血)があった場合でも、稀に避妊が失敗していることがある
避妊が成功しているのか判断するには少なくとも3週間の時間が必要です。アフターピルを服用したからといって100%避妊できるとは限らないため、服用から3週間後クリニックへの再受診が推奨されています。
アフターピル(緊急避妊薬)は処方箋があれば調剤薬局で処方してもらえる
アフターピル(緊急避妊薬)の必要性が注目されるにつれて、従来は産婦人科や婦人科という医療機関の選択肢しかなかった処方を受ける方法に、オンライン診療という方法が生まれました。
これに伴い、医師の処方箋があれば薬局で処方を受けられるようになった事は大きな進歩と言えるでしょう。
しかし、現状は緊急時すぐにオンライン診療が受けられなかったり、必要な研修を受けた薬剤師が在籍している薬局が少ないなど課題が山積みです。
世界ではアフターピルが市販され、誰でも低価格で手に入れられるにも関わらず、日本ではエラワンの未承認やアフターピルの市販化がされないことに疑問を持つ声が多く聞かれていました。
アフターピル(緊急避妊薬)の相場価格
アフターピル(緊急避妊薬)は基本的に自由診療での処方となるため、クリニックによって価格が異なります。
一般的に以下の価格帯が相場と言われています。
種類 | 相場価格 | 当院価格 |
---|---|---|
ノルレボ錠 | 約15,000~20,000円 | 取り扱いなし |
レボノルゲストレル | 約12,000~15,000円 | 11,000円/1回 |
プラノバール | 約6,000~8,000円 | 取り扱いなし |
エラ(エラワン) | 約10,000~15,000円 | 10,000円/1回 |
ウルピサド | 約10,000~15,000円 | 9,000円/1回 |
クリニックで処方を受ける際には、上記の相場価格に加えて初診料・診察料等が発生します。クリニックによって相場価格よりも高い場合や低い場合があるため、事前に問い合わせて確認しておくとよいでしょう。
まとめ
アフターピルについて色々な角度から解説しました。アフターピルの市販化はすでに目の前に迫っていますが、だからこそ個人が正しい性知識を持つことは引き続き重要視されます。
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