
ピル休薬期間中に生理がこない…これって大丈夫?原因と対処法を解説

低用量ピルを服用中、休薬期間にも関わらず生理がこないことに不安を感じたことはありませんか?ピルを飲んでいるのに妊娠した?それとも病気?気にしなくても大丈夫なの?と不安な気持ちのまま日々を過ごしている人も少なくありません。
この記事では、低用量ピルの休薬期間に生理がこない場合の原因と対処方法を詳しく解説します。現在、休薬期間中に生理がこなくて悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
ピルの効果
最初に、低用量ピルがどのような働きをもつ薬なのか、なぜ休薬期間中に生理がおこるのかを改めて解説します。ピルについての正しい知識を持つことで、不安を軽減させることもできます。自分が服用している薬について正しい知識を持ちましょう。
低用量ピルには、卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲステロンの2種類のホルモン有効成分が配合されています。これらの有効成分を毎日服用して一定量として保つことで、以下の効果が期待できます。
- 排卵が抑制されることによる避妊効果
- ホルモンバランスが安定することによる生理不順の改善
- ホルモンバランスを整えることによるPMSの緩和
- 子宮内膜の増殖を防ぐことによる生理痛・月経過多症状の改善
- ホルモンバランスのコントロールによる月経移動
上記の他、含まれるプロゲステロン成分の種類によって、肌荒れの軽減やニキビの改善、男性ホルモンの抑制効果などが期待できます。
低用量ピルの基本の服用方法
低用量ピルの多くは、21錠タイプもしくは28錠タイプです。どちらのタイプかによって服用方法が異なるため、注意しましょう。
21錠タイプ
21錠タイプの場合、1シート全てが有効成分を含む実薬です。毎日1錠を服用し、21日間服用した後は7日間服用を休止する「休薬期間」を設けます。休薬期間中には、生理に似た消退出血が起こるのが特徴です。29日目からは、新しいシートの服用を再開します。休薬期間明けは飲み忘れを起こしやすいため注意が必要です。
28錠タイプ
28錠タイプの場合、1シート中21錠は有効成分を含む実薬、7錠は有効成分を含まない偽薬(プラセボ)です。毎日1錠を服用し28錠全ての服用が終わった後は、29日目から新しいシートの服用を再開します。28錠タイプの場合、22日目から服用し始める偽薬には有効成分が含まれていません。そのため22日目から28日目までの期間が休薬期間に当たります。休薬期間中も偽薬を飲み続けるため、新しいシートへの移行がスムーズで飲み忘れを起こしにくいのが特徴です。
22日目から28日目までの休薬期間中に、生理に似た消退出血が起こります。
ピルの休薬期間に起こる生理とは
ピルの休薬期間に起こる出血は、厳密に言うと生理(月経)ではありません。定義として、月経は排卵に連動した定期的な出血を指し、ホルモンが大幅に変動することによって一時的に起こる出血は消退出血に分類されます。
生理の場合、黄体期に子宮内膜が厚く成長しますが、妊娠が成立しない場合は、子宮内膜が剥がれ落ちて排出され、月経が始まります。厚く育った子宮内膜を剥がすために子宮が収縮することで生理痛などの痛みが起こり、子宮内膜が厚く育った分だけ多くの出血がみられます。
一方、低用量ピルの服用時は妊娠時と似たホルモン状態を維持することで排卵が起こらず、子宮内膜も育ちにくいのが特徴です。休薬期間に入り、急激にホルモンが変動することで子宮内膜の剥離が始まりますが、薄い子宮内膜が排出されるだけなので収縮による痛みも少なく、出血量や出血期間も少ない傾向にあります。
消退出血が起こらないこともある?
低用量ピルの服用中は、消退出血の有無で避妊が成功しているかどうか確認しているという人も少なくありません。確かに、消退出血が起こるということは、子宮内膜がリセットされているため避妊が成功している可能性が極めて高いと言えます。
一方で、消退出血がないから妊娠しているかと言えば、そんなこともありません。
もともと、ホルモンバランスはさまざまな要因に影響を受けて乱れることがあり、通常の月経であってもストレスや生活習慣の乱れなどで周期が乱れてしまうことは珍しくありません。低用量ピルの服用時も同様です。
低用量ピルの有効成分によって薄い子宮内膜が、さまざまな要因によってうまく休薬期間中に剥離しないことがあります。休薬期間中に消退出血が起こらず、新たなシートを飲み始めたことで消退出血が起こらないまま次の休薬期間まで過ごすこともあります。
身体に異常がないのであれば、消退出血は起こらなくても大きな問題はありません。しかし、消退出血が起こらないことに何らかの理由があるケースも考えられるため、適切な対処が求められます。
ピルの休薬期間に生理がこない原因5つ
低用量ピルの休薬期間中に生理(消退出血)がこない場合、いくつかの原因が考えられます。
原因1.妊娠
低用量ピルの休薬期間中に消退出血が起こらない場合、前回の生理から今回までの間に性行為を行ったのであれば、まずは妊娠している可能性を疑います。
ピルは高確率で妊娠を阻害する効果が期待できますが、避妊成功率は100%ではありません。また、誤った服用方法や服用直後に下痢や嘔吐などで有効成分が適切に作用しなかった場合、避妊成功率は大幅に低減します。
妊娠している場合、以下のような妊娠初期症状がみられることもあります。
- 微熱がある(基礎体温が高い状態を保っている)
- おりものが増える
- 乳房が張る
- つわり症状(吐き気)がある
- 強い眠気がある
妊娠している可能性がある場合は、妊娠の有無が判定できるまで飲酒、喫煙、風邪薬などの服用を控えましょう。
原因2.子宮内膜が薄くなっている
低用量ピルの有効成分によって、子宮内膜が極端に薄くなっている場合、生理が起こらないこともあります。また、実際は消退出血が起こっているにも関わらず、極少量過ぎて気付かないというケースもあるでしょう。
おりものが茶色がかっている、トイレットペーパーに極少量の血がついたがその後出血が起こらなかったなど、自分自身が生理と認識していないだけで、実際は起きていることも珍しくありません。
子宮内膜が薄いことで生理がこない場合は、特に健康上の問題もありません。しかし、子宮内膜が薄いことで生理が起こらないのか、他の原因があるのかを判断するのは難しいでしょう。
妊娠の可能性もなく、他の原因に心当たりがなくても3周期(3シート分)消退出血が起こらないのであれば、病院を受診するのがおすすめです。
原因3.ピルの服用方法を間違えている
21錠タイプの低用量ピルを服用している人の場合、服用方法を誤ってしまうことで生理が起こらないケースが多々あります。1シートを服用後、休薬期間を置かずに新しいシートの服用を始めてしまった場合、有効成分が効き続けるため生理は起こりません。
生理を起こさないよう連続服用できるタイプの低用量ピルもありますが、連続服用が可能な低用量ピルであっても最長は120日までとされています。また、連続服用中は不正出血が起こりやすいなどのデメリットもあります。
低用量ピルは用法用量を守って服用する必要があるため、処方された低用量ピルに適した服用方法を守って服用してください。
原因4.ストレス
日常生活で強いストレスを感じてる場合、ホルモンバランスが乱れて生理が起こらないことがあります。生活習慣の乱れなども体にはストレスとして蓄積し、悪い影響を及ぼします。
特に、低用量ピルを避妊目的で服用している人のなかには、万が一避妊に失敗してしまったらどうしようという強い不安がストレスとなって、生理が起こらないケースも少なくありません。
強い不安から生理がこない事が、さらに強い不安を生んでストレスになり、長期間生理が起こらなくなってしまうこともあります。
ストレスの原因を改善しても3周期(3シート分)生理が起こらないのであれば、産婦人科を受診して他の原因がないか確認した方がよいでしょう。
原因5.病気
何らかの病気が原因でピル服用中に生理がこない可能性も考えられるでしょう。卵巣疾患、子宮疾患などは生理の有無に大きな影響を与えます。「低用量ピルが原因で生理がとまっているだけ」と思い込んで対処をしないでいると、気付かないうちに重症化してしまうこともあるでしょう。
特に、以下の症状がみられる場合は注意が必要です。
- 急激に体重が増減している
- 子宮や卵巣に痛みや違和感がある
- おりものに変化がある
- 不正出血が度々起こる
上記に当てはまる場合は、速やかに産婦人科を受診しましょう。また、原因が分からないまま3周期以上生理が来ない場合にも、産婦人科を受診して検査を受け、病気が隠れていないか確認した方がよいでしょう。
ピルを服用していても100%避妊はできない
各避妊方法の避妊成功率 | ||
---|---|---|
理想的な使用方法 | 一般的な使用方法 | |
ピル | 99.7% | 92% |
コンドーム | 98% | 85% |
IUD | 99.4~99.9% | 99.2~99.9% |
リズム法 | 91~99% | 75% |
女性避妊手術 | 99.5% | 99.5% |
男性避妊手術 | 99.9% | 99.85% |
参考:日本産科婦人科学会|低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)
低用量ピルは、世界中の女性が主体的に行える避妊方法として支持されており、高い避妊率を誇ります。しかし、その避妊成功率が100%ではない点については、適切に理解しておく必要があるでしょう。
低用量ピルの避妊成功率は、理想的な方法で服用できていた場合、99.7%と言われています。これは、他の避妊方法と比較しても非常に高い確率です。飲み忘れがあって適切にリカバリーするなどの一般的な方法であっても92%と高い確率であることが分かります。
しかし、どのような避妊方法でも100%の避妊率になることはないのです。低用量ピルを服用しているから妊娠している筈がない、と生理がこない状態を放置しているうちに、妊娠週数が経過してしまったという事例もあります。
ピルの休薬期間に生理(消退出血)が起こらない場合の対処法
低用量ピルの休薬期間にも関わらず生理が起こらない場合には、以下のように対処しましょう。
妊娠検査薬を使用する
前回の月経もしくは消退出血がおこった後、現在までの間に1度でも性行為を行った場合は、妊娠検査薬を使って妊娠の有無を調べてください。
低用量ピルを正しく服用していたとしても、コンドームなど他の避妊方法と併用していたとしても、妊娠の可能性があるのであれば検査して調べましょう。
ただし、一般的に販売されている妊娠検査薬は妊娠4週から、つまり月経予定日の2週間後から使用可能なものがほとんどです。できる限り早く調べたい人は、妊娠4週(月経予定日)から使用できる早期妊娠検査薬を使用するとよいでしょう。
ピルの服用方法を再確認する
休薬期間中に生理がこない場合、ピルの服用方法に誤りがないかも確認しましょう。特に、飲み忘れ後の対応に関しては曖昧になっている人も少なくありません。
ピルを1日飲み忘れた場合の対処方法
低用量ピルの飲み忘れが発覚した場合、1日分であれば気付いた時点ですぐに飲み忘れた分を服用して対処しましょう。その後、普段と同じ時間帯に当日分を服用します。
万が一、服用時間頃に前日服用し忘れたことに気付いた場合は、2錠まとめて服用しても構いません。
ピルを2日飲み忘れた場合
低用量ピルを2日間飲み忘れた場合は、気付いた時点で1錠、定刻に当日分の1錠を服用して対処します。ただし、低用量ピルの避妊効果が期待できない可能性があるため、ピルを服用しても1週間は、性行為の際に他の避妊方法を併用するよう気を付けましょう。
また、飲み忘れが発覚した日の直前5日以内に性行為があった場合、排卵している、もしくはこれから排卵する可能性があるため、緊急避妊薬の服用も検討してください。
ピルを3日以上飲み忘れた場合
3日以上低用量ピルを飲み忘れた場合、服用中のシートは破棄して服用を中断しましょう。次の生理1日目から新しいシートの服用を再開してください。
産婦人科を受診する
3周期(3シート分)、休薬期間中の生理が起こらない場合には、産婦人科を受診しましょう。何らかの病気が隠れている可能性もあります。
また、妊娠検査薬で陰性が出ても、2周期(2シート分)生理が起こらないのであれば産婦人科を受診した方がよいでしょう。日本製の妊娠検査薬は非常に高い精度で妊娠の有無を調べることができますが、検査するタイミングや誤った使用方法によって誤判定が出る可能性もあります。性行為があり、妊娠の可能性がある場合は、3周期も放置してしまうと子宮外妊娠などの場合非常に危険です。
ピルの休薬期間に生理が起こらなかった時は?簡単フローチャート
休薬期間中に生理がこなくても、休薬期間が終わった後は通常通り低用量ピルの服用を再開して構いません。
もしも、様子を見ている間に不正出血やおりものの変化があった場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。
アフターピルの服用後は生理が遅れることがある
アフターピル(モーニングアフターピル)は、避妊に失敗してしまった際に妊娠を防ぐ緊急避妊薬です。低用量ピルとは異なり、必要時にのみ服用します。
アフターピルの服用後は、通常の生理予定日より生理が遅れてしまうことも珍しくありません。服用後3週間後を目安に妊娠検査を行い、妊娠の有無を確かめましょう。
妊娠検査薬を使用して陰性が出ても、生理がこないのであれば再検査が必要です。妊娠検査薬の使用もしくは産婦人科を受診して再検査を行ってください。

ピルの休薬期間中に生理がこない場合は落ち着いて対処を
低用量ピルの休薬期間に生理がこないと、不安に感じてしまう女性は多いでしょう。しかし、生理がこない原因にはさまざまなものがあるため、必要以上に不安になる必要はありません。
一方で、生理がこないという現象は、何らかのサインである可能性でもあります。今回紹介した対処方法を参考に、自分自身の状況に合わせた対処を行い、それでも生理がこない場合には必ず産婦人科を受診してください。