ピルの休薬期間って何?避妊効果に影響は?休薬しない場合どうなるの?
女性が服用する経口避妊薬として世界中で使用されているピル。世界に比べると日本ではまだ服用率の低いピルですが、避妊以外にも様々な効果が期待できるとして認知度が高まっています。
この記事では初めてピルを服用する人が疑問に思う休薬期間について解説。休薬期間中の避妊効果や休薬しないケースの他、ピルについての正しい知識やピルの飲み方、飲み忘れた際の対処法についても紹介します。
「初めてピルを服用する」
「ピルに興味があって服用を検討している」
という人はぜひ参考にしてみて下さい。
ピルは効果的な経口避妊薬
ピルは女性が服用することで99.7%の避妊効果が期待できる経口避妊薬です。避妊以外にも様々な場面で服用されるため、主に避妊目的で処方される低用量ピルはOral contraceptive(経口避妊薬)の頭文字をとって「OC」と呼び分けられています。
ピルを使用した避妊の仕組み
低用量ピルは体の3つの部分に作用して避妊効果を発揮するホルモン薬です。
【作用2】子宮内膜を増えにくくして着床しにくくする。
【作用3】子宮頸管付近にある粘液をドロドロにして精子が子宮に入りにくくする。
排卵抑制、着床抑制、精子の侵入抑制という3段階の避妊作用のおかげで、他の避妊方法よりも高い効果が期待できます。
病気や生理にまつわる症状の改善薬としても活躍
ピルは避妊薬以外にも様々な場面で活躍しています。
子宮内膜症、卵巣嚢種、生理不順の改善、月経困難症の緩和、骨粗鬆症、脳動脈瘤、子宮がん、卵巣がん、乳房の良性腫瘍リスク軽減等の目的で処方されることも。
医師の診察で治療にピルが必要だと判断された場合には、保険適用のLEP(低用量エストロゲンプロゲステロン配合薬)が処方されます。
避妊効果以外のピルを服用するメリット
避妊や病気の治療、症状の緩和、リスク軽減以外にもピルを服用するメリットがあります。近年これらのメリットが注目され、ピルの服用を検討する人も増えてきました。
- 出血量の軽減による貧血の症状改善
- 生理痛の痛み軽減
- ニキビの改善
- 美肌効果
特に男性ホルモンが影響している酷いニキビに悩む人は、ピルを服用することで劇的に症状が改善される場合も。避妊効果を求めていない人でも、生理痛の軽減や生理時の貧血改善を目的にピルを服用するケースが増えています。
ピルの副作用について
ピルの副作用には【吐き気、頭痛、胸の張り、だるさ、むくみ】などが挙げられます。これらはピルに体が慣れていない為に起こる症状で、服用3ヵ月を目安に症状が改善するケースがほとんどです。
重篤な副作用として血栓症リスクの増加が有名ですが、血栓症はピルを服用していない人でも10,000人に1~5人の確率で起こる病気。ピル服用によるリスクは10,000人に3~9人程の確率です。極めて稀な副作用と言えます。ただし、血栓症のリスクが高い喫煙者の場合はピル服用による血栓症リスクが増大します。その他の血栓症の発症リスクが高い人も、場合によってはピルの処方を受けられないことがあります。
参考:日本産婦人科学会
ピルを服用するとハイリスクになる人の特徴
ピルを服用するに当たって以下の特徴に当てはまる人は要注意。重篤な副作用が起こるリスクが高いとされています。
- 40歳以上
- 喫煙者
- 家族に乳がん、血栓症になった人がいる
- 肥満度指数BMIが30以上
- 高血圧
- 糖尿病、肝障害、心臓病、腎臓病、てんかんの人
これらの項目に当てはまる人はピルの処方を受ける際に必ず医師へ申告しましょう。
ピルの種類
ピルはホルモン配合量によって、高用量ピル(50マイクログラム以上)中容量ピル(50マイクログラム)低用量ピル(50マイクログラム以下)の3種類に分けられます。日本で低用量ピルが認可されてからは、避妊を目的としたピルは低用量ピルが主流となってきました。
さらにピルは1シート(21錠)中のホルモン配合量によって、1相性、2相性、3相性と分類されます。
ホルモン配合量の違い | 特徴 | |
---|---|---|
1相性 |
1シート全て同じホルモン配合量
|
・どこからでも飲み始めることが可能
・月経移動したい人におすすめ |
2相性 |
ホルモン配合量が2段階で変わる
|
・1シート内でピルを飲む順番が決まっている
|
3相性 |
ホルモン配合量が3段階で変わる
|
・1シート内でピルを飲む順番が決まっている
|
女性の体は生理周期に合わせてホルモンが変動します。ホルモン変動に合わせて配合量の違うピルを服用する2相性や3相性は、段階型ピルと呼ばれることも。自然に近いホルモンバランスを維持しやすいメリットの一方、不正性器出血や胸が張るなどの症状がでやすいデメリットもあります。
ピルの服用方法
ピルは正しい服用方法を守ってこそ効果が期待できるもの。正しい服用方法を理解して、毎日服用することが大切です。
基本の服用方法
ピルは1日1錠、飲む時間や飲み方に指定はありませんが基本的に同じ時間帯に服用しましょう。
ピルを飲み始める際、生理の第1日目から第5日目までに服用開始し、飲み始めた初日から服用開始する場合、生理終了直後から避妊効果が期待できます。
サンデースタート
サンデースタートとは、生理が始まってから最初の日曜日にピルの服用を開始する方法。曜日を決めて飲み始めるので服用日数が分かりやすく、ピルを始めて服用する人におすすめの方法です。
サンデースタートでピルの服用を始めると、休薬期間の出血が必ず火曜日水曜日になるため週末に出血の日が重なりません。週末の休日に出血を気にせずお出かけや趣味を楽しみたい人にもサンデースタートが人気です。
ただし、服用を開始して最初の1週間は避妊効果が発揮されない場合があるので、他の避妊法の併用が必要になります。
クイックスタート
生理開始日に関係なくピルの服用を始める方法をクイックスタートと言います。服用を決めたら直ぐに飲み始めたいという人にはうってつけです。
クイックスタートでピルを始める場合には、前回の生理開始から服用を始めるまでの間、一度も性行為が無い状態にしておきます。つまり確実に妊娠していない状態でない限り、クイックスタートは始められません。
このようにクイックスタートには絶対条件があるため、前月の性行為の有無を正確に確認してから開始しましょう。
ピル服用後激しい下痢や嘔吐してしまった時には
毎日ピルを服用していると体調が優れない日もあるでしょう。もしもピルを服用した後、激しい下痢や嘔吐をしてしまった場合は薬の効果に不安を感じてしまいますよね。
基本的に服用からピルが吸収されるまでに必要な時間は3時間。下痢や嘔吐がその後であれば、ピルは既に吸収された後なので問題ありません。
ピル服用から3時間以内に下痢や嘔吐の症状が出た場合、下痢や嘔吐が収まった後に追加で服用し、翌日の服用時刻から通常通り服用しましょう。
ピルの避妊効果はいつから?
避妊効果を目的にピルを服用する場合、ピル服用と同時に避妊効果が期待できると勘違いしている人も少なくありません。これは大きな間違いです。
ピルは基本的に服用7日目から避妊効果が期待できます。これはピルに含まれるホルモンによって体が卵巣の動きをストップさせるまでに必要な時間です。
ピルに配合されたホルモンを体が受け取り、卵巣の動きを停止するまでに7日かかると言われています。そのためピル服用開始から7日目までは、ピル以外の避妊方法も併用しましょう。これを「7daysルール」と言います。
例外として、生理初日からピルの服用を始めた場合があります。生理初日からピル服用を始めた場合は、生理終了後には避妊効果があると考えても良いでしょう。
ピルの休薬期間とは
ピルには薬の服用をストップする休薬期間が欠かせません。ピルの服用は28日間を1サイクルとし、21錠の薬を服用。残りの7日間は休薬期間として、薬を飲まないまま過ごします。
中には1シート28錠のタイプもありますが、28錠中7錠はプラセボという偽薬。プラセボは飲み忘れ防止やピル服用の習慣作りのために用意されているものなのでホルモンは配合されておらず、飲み忘れても支障のない錠剤です。
ピルに休薬期間が必要な理由
ピル服用中は卵巣が、働きを止めています。この間卵胞は育たず排卵もされないため、卵巣の働きを正常に保つためには定期的に動きを再開させなければいけません。
休薬期間はメンテナンスタイムのようなもので、意図的にピルの服用を止めることで卵巣や子宮の活動を再開させています。ピルの連続使用は最大3シートまでなので、少なくとも3ヵ月に1度は卵巣や子宮の働きを再開させて健康な状態をキープしましょう。
ピルはきちんと服用すれば休薬期間中も避妊効果が継続
ピルは毎日きちんと服用していれば、休薬期間中も避妊効果が継続する薬。ピルを服用していると卵巣の活動がストップし卵子が育たなくなります。休薬期間中ピルを服用しなくても卵子が育ちきっていない卵巣から排卵が起こることはありませんし、7日間で急に卵子が育ち、排卵することもありません。28錠タイプで休薬期間にプラセボ(偽薬)を服用するタイプも同じです。
ただし休薬期間明けは最もピルの飲み忘れが多いタイミングなので十分に注意しましょう。
消退出血って?休薬期間中の出血は生理じゃないって本当?
休薬期間に入ると2~3日後に出血が起こります。生理のように膣から出血するので、生理が起こっていると勘違いする方も多いでしょう。
実は、この出血は消退出血と言い厳密には生理とは異なるもの。どちらも剥がれ落ちた子宮内膜を排出する際に起こる出血という点では同じですが、ピルなどで人工的に起きるものを消退出血、自然に起きるものを生理と呼び分けます。
生理に比べて出血期間が短い他、出血量も少ないのが特徴。消退出血は殆どの場合起こるもので、休薬期間に消退出血が起こらない人の割合はピル服用者全体の1%ほどです。消退出血が起きなかった場合には、妊娠を疑った方が良いかもしれません。
ピルを休薬しない場合は3シートまで服用OK
生理の日をずらす目的でピルを服用している人や、消退出血の起こる日をずらしたい場合、休薬期間を取らずにピルを服用し続けることも可能です。
休薬期間を取らない場合、ピルは最大で3シートまで服用可能。しかし1シート内でホルモン配合量が変化する2相性や3相性ピルの場合、休薬期間を取らない場合に適したホルモンのコントロールが必要です。2相性・3相性ピルを服用していて休薬期間を取らずに服用したい場合は、医師から服用方法の指示を受けましょう。
慌てないで!ピルを飲み忘れた際の対処法
ピルの服用が習慣化しない内は飲み忘れてしまうことも珍しくありません。ピルを飲み忘れた場合には落ち着いて以下のように対処しましょう。
24時間以内に飲み忘れに気付いた場合
服用予定時刻から24時間以内に飲み忘れに気付いた場合、気付いた時点でピルを服用しましょう。
1日目20時が服用予定時刻、2日目8時に飲み忘れに気付いた場合。(予定時刻から12時間経過)
すぐにピルを1錠服用します。2日目20時には再びピル1錠を服用して下さい。
翌日の服用予定時刻に飲み忘れに気付いた場合
翌日の服用予定時刻に飲み忘れに気付いた場合には、気付いた時点でピル2錠を服用します。
1日目20時が服用予定時刻2日目の20時に前日の飲み忘れに気付いた場合。(予定時刻から24時間経過)
2日目20時に2錠同時にピルを服用して下さい。
2日以上飲み忘れていた場合
2日以上(24時間以上)飲み忘れていた場合は対処法が二つに分かれます。
避妊を目的としてピルを服用している場合、避妊効果が下がる可能性があるので服用をストップ。消退出血が終わってから次のシートを飲み始めます。
1日目の20時が服用予定時刻、2日目20時の服用も忘れて2日目23時に飲み忘れに気付いた場合。(27時間経過)
避妊効果が低下している可能性が高くなります。服用を中止して、消退出血終了後新たなシートから服用を始めましょう。
病気の治療を目的としてピルを服用している場合、飲み忘れに気付いた時点で2錠服用して下さい。次の日からは通常通りの服用で問題ありません
1日目の20時が服用予定時刻、2日目20時の服用も忘れて2日目23時に飲み忘れに気付いた場合。(27時間経過)
すぐに2錠一緒に服用します。3日目20時には通常通り服用します。
ピルを飲み忘れた時の注意点
ピルは初めて服用した日から7日間かけて卵巣の活動を止めています。服用開始から7日以内に飲み忘れると卵巣の活動停止時期が遅れる場合も。避妊を目的としている場合は飲み忘れがあった日から7日間別の避妊方法を併用しましょう。
同じく飲み忘れてから2日以上が経過してしまい服用を中止している時も、排卵が行われる可能性があります。この場合も他の避妊法との併用が必要です。
【妊娠の可能性も】休薬期間明けの飲み忘れに要注意!
休薬期間は卵巣を正常に保つために設ける期間。ピルにより活動を休止していた卵巣は休薬期間に、通常通り卵子の元である卵胞を育て始めます。
休薬期間開始から8日目となる休薬期間明けに再び新しいシートのピルを服用することで、卵胞の成長は止まり、卵巣の活動が止まるのと共に退行していき排卵されることはありません。
しかし、この休薬期間明けの8日目にピルを飲み忘れると卵胞の成長を上手く止められないことがあります。9日目に思い出してピルを服用しても、卵胞が成熟して排卵してしまう可能性も考えられるでしょう。排卵した時期に他の避妊法もなく性行為を行った場合、妊娠することも。
特に21錠タイプでは休薬期間明けに飲み忘れが起こりやすいです。スマホのアラーム機能などを使ってリマインドし、十分に注意して飲み忘れを防ぎましょう。
正しい休薬期間を設けてピルを効果的に服用しよう
ピルについての正しい知識や休薬期間について解説しました。ピルは用法用量を守れば高い避妊効果が期待できるホルモン薬。正しい知識で服用すれば、避妊以外にも様々なメリットがあると分かりましたよね。
ピルによる様々なメリットを得るためにも、停止状態になっている卵巣を正常に保つための休薬期間を正しく設けることが大切です。
正しい使用方法でこそ真価を発揮できるピル。しっかりとルールに添って服用して下さいね。
当院のピルはすべて完全自由診療にて処方しておりますので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。
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