ピルっていっても種類は色々!低用量ピル・中用量ピル・ミニピルそれぞれの違いや用途は?
女性にとって身近な存在になりつつある「ピル」。しかし、ピルに種類がある事やそれぞれの違いを知らないという人は少なくありません。
この記事では、ピルの種類や低用量ピル、中用量ピル、ミニピルの違い・用途を解説。
「今使っているピルにはどんな特徴があるの?」
「これからピルを服用しようと思っているけど、どれを選べば良いのか分からない」
という人は、是非参考にしてみて下さい。
ピルとは
女性の避妊や生理に関する悩みを軽減できる薬として世界中で活用されているピル。ピルには様々な種類があります。
まずは、ピルの種類による内容成分、用途、副作用等基本的な違いについて紹介していきましょう。
【低用量ピル・中用量ピル・ミニピル】種類の違い
ピルには【高用量ピル・中用量ピル・低用量ピル・ミニピル】の4種類がありますが、高用量ピルは深刻な副作用等のリスクから現在では殆ど処方されることがありません。そのため、一般的に処方されるのは【中用量ピル・低用量ピル・ミニピル】の3種類です。
使用用途や使用方法など様々な違いがありますが、主に配合されている女性ホルモン(エストロゲン)の含有量と含有成分による違いがあります。
ピルの種類 | エストロゲン含有量(1錠当たり) | 黄体ホルモン配合の有無 |
---|---|---|
中用量ピル |
50マイクログラム
|
有
|
低用量ピル |
50マイクログラム以下
|
有
|
ミニピル |
0
|
有
|
近年、低用量ピルの中でも更にエストロゲン配合量を少なくした【超低用量ピル】も増えてきました。
そのため超低用量ピルとミニピルが混同されがちですが、ミニピルはエストロゲンが配合されておらず黄体ホルモンのみが含まれており、中用量ピルや低用量ピルとは違う薬と言っても良いでしょう。
【低用量ピル・中用量ピル・ミニピル】服用目的の違い
それぞれのピルは、エストロゲンの配合量や配合成分の違いにより効果が異なるもの。そのため、ピルは使用目的によって低用量ピル・中用量ピル・ミニピル等使い分ける必要があります。
ピルの種類 | 服用目的 |
---|---|
中用量ピル | 緊急避妊効果・月経の移動・月経不順、月経困難症の改善、子宮内膜症、月経過多の改善 |
低用量ピル | 避妊効果・PMS(月経前症候群)、ニキビ、月経痛、月経不順、月経過多、子宮内膜症の改善 |
ミニピル | 避妊効果、子宮内膜症の改善 |
大まかに服用目的を分けると、緊急避妊薬や月経に関る重度の症状改善には中用量ピル、通常の避妊や月経に関る症状改善、肌荒れの改善には低用量ピル、低用量ピルが体質的に合わず服用が難しい人が避妊のために利用するのがミニピルといった分類ができます。
【低用量ピル・中用量ピル・ミニピル】副作用の違い
低用量ピル・中用量ピル・ミニピルの副作用には以下の症状があります。
●低用量ピル・中用量ピル
吐き気/嘔吐/発疹/湿疹/肌のかゆみ/肝臓の機能異常/不正出血/乳房の張り/むくみ/便秘/下痢/口内炎/ほてり/肩こり/腰痛/眠くなりやすい/血栓症のリスク
●ミニピル
不正出血/乳房の張り/頭痛/気分不良/吐き気/嘔吐/不安感
起こる可能性のある副作用を挙げていますが、その多くは服用を続けるごとに減退していく事が多いです。
低用量ピルは中用量ピルよりも副作用が起こりにくく、ミニピルは低用量ピルよりも副作用が起こりにくいと言われています。
低用量ピルの用途・服用方法
それぞれの違いが分かった所で、個別に用途や服用方法を紹介していきます。まずは最もメジャーなピルである低用量ピルの用途と服用方法です。
低用量ピルの用途
主に経口避妊薬として使われている低用量ピル。月経困難症など、生理に関するマイナートラブル改善の他、肌荒れの改善を目的として使われることもあります。
中用量ピルに比べてホルモン量が少ないため副作用の出にくいメリットがありますが、ホルモン量の少なさから飲み忘れた際に避妊効果が大幅に低下したり生理に関する症状が再燃したりすることも。
低用量ピルには、1シート全て同じホルモン量の1相性ピルと、1シートの中でホルモン量が3段階に変化している3相性ピルがあります。
それぞれのピルはさらに21錠タイプと28錠タイプに分かれていて、それぞれに服用方法が異なるのも特徴の1つです。
低用量ピルの服用方法
低用量ピルは生理が始まった日を1日目とし、生理1日目から5日目までに飲み始めます。基本的には毎日同じ時間に1日1錠を服用。
21錠タイプは1シートを服用後7日間の休薬期間(薬を服用しない期間)が設けられます。7日間、ピルを服用しない日を作り7日後には新しいシートを飲み始めましょう。
28錠タイプでは最後の7錠がプラセボ(偽薬)になっているため、1シート全て飲み切ったら新しいシートを飲み始めます。休薬期間明けの飲み忘れが心配な場合や、初めて低用量ピルを服用する際には28錠タイプを選ぶ人が多いです。
特に避妊を目的として低用量ピルを利用する場合、飲み忘れた状態で避妊をせずに性交を行うと妊娠する可能性があるので、十分注意しましょう。
中用量ピルの用途・服用方法
続いては中用量ピルの用途と服用方法です。より副作用の少ない低用量ピルが認可を受けてからは利用されるケースが減ったものの、中用量ピルならではの用途があります。
中用量ピルの用途
中用量ピルはホルモン配合量が多く、効果が出るまでの時間が低用量ピルに比べると早く・強いことから避妊に失敗してしまった際の緊急避妊薬として利用されています(ヤッペ法)。
緊急避妊薬は、性行為から72時間以内に服用することで高い確率で妊娠を防ぐ効果が期待できることから、性行為中のコンドームの破損や離脱・望まない避妊無しの性行為・低用量ピルを飲み忘れた状態で避妊無しの性行為等を行ってしまった際に利用されます。
ただし、プラノバールという中用量ピルを使ったヤッペ法という緊急避妊は、嘔吐などの副作用が出やすい上に避妊率が低いため、現在はノルレボやレボノルゲストレル、エラといったアフターピルを服用するのが主流となっております。
その他、月経を予定日から早めたり遅らせたりする月経移動や月経困難症の改善を目的として処方されることも。
中用量ピルは低用量ピルよりもホルモン配合量の多いことから、副作用が現れやすいリスクがあります。
そのため、中用量ピルにも低用量ピル同様経口避妊薬の効果は期待できますが、病気の治療や緊急避妊など低用量ピルでは対処できないと医師が判断した場合のみ使われることが多いです。
中用量ピルの服用方法【緊急避妊の場合】
中用量ピルのプラノバールを緊急避妊薬として服用する場合は、2錠を12時間ごとに2回(計4錠)服用します。基本的に継続的に服用する必要がありません。
避妊の無い性行為を行ってから24時間以内に服用すると最も効果が期待でき、72時間以内の服用が望ましいです。
緊急避妊薬を服用すると、3日~3週間以内には生理(消退出血)が始まります。この出血があれば避妊はほぼ成功したと言っても良いでしょう。 3週間以上生理(消退出血)が始まらない場合には妊娠の可能性があるため、速やかに妊娠検査を行って下さい。
中用量ピルの服用方法【生理を早める場合】
月経を早める時には、生理1日目から5日目以内に中用量ピルの服用を始めます。
最低でも1日1錠10日は服用し、月経を起こしたいタイミングの2~3日前に服用を中止。服用を止めると2~4日以内に月経が始まります。
- 生理1日目(月経周期1日目)にピルを服用開始
- 月経周期14日目に服用中止
- 月経周期16~18日までの間に生理開始
- 月経周期19~21までに生理が終わる
服用中止後の生理開始日には個人差がありますが、多くの場合7~10日間程生理を早めることができます。
旅行やスポーツの大会・試験等を理由に生理を早めたい場合、その期間中に薬を服用しなくても良いのが最大のメリットです。
特に、中用量ピルに副作用が現れやすく予定を万全の態勢で迎えたいという人は生理を早める方法が良いでしょう。
また生理が開始してから服用を始めるので、生理周期が安定していない人でも月経移動ができます。
デメリットは、中用量ピルの服用期間中に少量の出血が続く場合があるという点です。
中用量ピルの服用方法【生理を遅らせる場合】
生理を遅らせる場合には、生理予定日の5日前から生理を遅らせたい日まで1日1錠の服用を続けます。内服を止めてから2~4日程で生理が始まります。
- 月経周期24日目から中用量ピルを服用開始
- 翌月周期の35日目に服用中止
- 月経周期37~39日までに生理開始
生理を遅らせる方法には生理予定日の把握が必要なので、ある程度生理周期が安定している人向けです。
また、生理を遅らせる場合は排卵日以降に中用量ピルの内服を始めるため、妊娠していないことが絶対条件になります。
メリットは服用を中止してから生理開始までの日数に多少の誤差が生じたとしても、生理予定日をほぼ確実に生理の無い状態で迎えられるという点です。
一方で、中用量ピルによる副作用が現れた場合、旅行や試験・スポーツの大会等生理を遅らせる理由となったイベントを万全の態勢で迎えられない可能性があります。これが生理を遅らせる方法のデメリットとなり得るでしょう。
ミニピルの効果と特徴・使い方
日常的な経口避妊薬としてピルを使いたい人の中でも、エストロゲンによる副作用が現れてしまう人や、肥満や喫煙等体質を理由に低用量ピルの処方を受けられない人向けなミニピル。
副作用やリスクのある人がミニピルを服用できる理由や服用方法を解説します。
ミニピルの用途
本来ピルはエストロゲン・プロゲストーゲン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが配合されています。
ミニピルにおける最も大きな特徴はエストロゲンが配合されておらず、プロゲストーゲン(黄体ホルモン)のみのピルである点。
エストロゲンが配合されていないことでピルの副作用は大きく抑えられ、副作用が理由で低用量ピルや中用量ピルを服用できない人の経口避妊薬として選ばれています。
経口避妊薬としての効果は低用量ピルと殆ど同じ。正しい服用方法で服用すれば高い避妊効果が期待でき、子宮内膜症の改善等を目的として処方されることもあります。
低用量ピルや中用量ピルは血栓症ハイリスクの人には処方が禁忌とされていますが、ミニピルはエストロゲンを配合していないことから比較的に血栓症リスクを抑えられる薬。
低用量ピルや中用量ピルが体質に合わない人にとって、安全性を保って服用できる経口避妊薬(子宮内膜症改善薬)です。
ミニピルの服用方法
ミニピルは1日1錠を毎日決まった時間に服用します。低用量ピルと異なり、休薬期間やプラセボ(偽薬)を入れず365日服用し続けます。
低用量ピルや中用量ピルはエストロゲンを含んでいるので服用中に生理が起こることはありませんが、プロゲストーゲンのみを配合しているミニピルは自然に生理が起こります。
生理期間中も服用を続け、1シートが終わったらそのまま次のシートの服用を始めます。
安全性がミニピルのメリットなら、規則的な服用方法がデメリットになるでしょう。
ミニピルは3時間以上服用時間がずれてしまうと効果が失われてしまう可能性が有り12時間以上ずれると避妊効果がなくなります。
避妊を目的として服用する場合には特に厳重な服用管理が必要です。
まとめ
ピルには中用量ピル・低用量ピル・ミニピル等の種類があり、それぞれに持っている特性や使用用途が違います。
緊急避妊薬等に使われる中用量ピル、経口避妊薬や生理に関るトラブルの改善を目的として使われる低用量ピル。
さらに、低用量ピルが体質に合わず服用出来ない人に処方される経口避妊薬兼子宮内膜症治療薬として取り扱われるミニピル。
ピルの違いやそれぞれの特徴・服用方法などを理解し、目的や体質・ライフスタイルに合わせた処方を受けましょう。
当院では、一人ひとりの症状やライフスタイルに合ったピルをご提案し処方いたしますので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。
※当院のピルはすべて完全自由診療にて処方しておりますので病気の治療を目的とする保険診療でのピル処方をご希望の方は、隣接するグループクリニックをご紹介いたします。