再発が多くやっかいな性感染症「性器ヘルペス」の症状・原因・治療法について徹底解説
痛痒くて不快な症状が特徴のヘルペス。何度も再発して悩みの種になっている人も少なくないでしょう。ヘルペスが性器にでてしまう性器ヘルペスでは、デリケートな部分だけに1人で悩んでしまう人も多いです。
この記事では、性器ヘルペスについて原因や症状、感染経路、治療方法などを徹底解説。早く治す方法や、完治が難しいと言われる理由についても紹介します。
性器ヘルペスに悩んでいる人はぜひ参考にしてみて下さい。
性器ヘルペスとは
性器ヘルペスとは、性器に水ぶくれなどができてしまうウイルス性の病気です。再発が多いことで有名なことから、名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
まずは、性器ヘルペスの原因や特徴について解説します。
原因
性器ヘルペスは単純ヘルペス1型もしくは単純ヘルペス2型というウイルスが原因で起こる病気です。性感染症にも指定されています。
ヘルペスウイルスは感染したからといって必ず発症するものではありません。
感染しても8割の人は無症状であると言われていて、単純ヘルペス1型なら60%、単純ヘルペス2型なら10%程度は一般の人にも無症状ウイルス保持者が居ると言われています。
特徴
ヘルペスは症状が出る場所によって名前が変わる病気です。口に発症すると口唇ヘルペス、性器に発症すると性器ヘルペス、角膜や眼の周りに発症すると眼部ヘルペスと呼ばれます。
これまで単純ヘルペス1型は口や目に感染し、性器ヘルペスを引き起こすのは単純ヘルペス2型だと言われていました。
しかし、最近では1型2型どちらのウイルスであっても口唇ヘルペスや性器ヘルペス、眼部ヘルペスを引き起こすことが分かっています。
性器ヘルペスはウイルスが増殖した粘膜や皮膚からの感染を引き起こすため、キスや性行為はもちろん、オーラルセックスによって口から性器へと感染を起こすこともあります。中にはアナルセックスにより肛門や腸の粘膜への感染例も。
世界中で感染者が増えている病気の1つで、日本でも毎年9,000人近くの感染者が出ていると言われています(※)。
無症状のウイルス保持者が多いことや、感染しやすいこと、完治の方法がないなどの理由により、現在の医療では感染者を減らすことは難しいとも言われている病気です。
※参考:厚生労働省 性感染症報告数(2004年~2022年):性別にみた性感染症(STD) 報告数の年次推移
性器ヘルペスの症状
性器ヘルペスは、発症すると特徴的な症状がいくつかあらわれます。
男女別に感染後初めて発症した時の症状と再発時の症状の特徴を解説していきます。
女性の初感染症状
ヘルペスは初感染時、全身症状が出ることが多い傾向にあります。
大陰部、小陰部など粘膜の周辺に水ぶくれや潰瘍(水ぶくれが潰れたもの)ができます。
性器周辺に腫れやかゆみが起こり、潰瘍の部分はジクジクとした痛みを伴うケースも多いようです。
性器の症状以外、発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感など風邪に似た全身症状があらわれる人も珍しくありません。
性器周辺の潰瘍は、立ったり歩いたりする度に擦れて激痛を伴う場合もあり、歩くことすら困難になる人もいる程。
性器ヘルペスは、股関節付近のリンパの腫れや膀胱炎と併発することもあり、症状が重くなると入院が必要となることもあります。
女性の再発症状
再発症状では、初感染症状に比べると症状が軽く収まる人が多いと言われています。
発熱やリンパの腫れなどを起こすケースはほとんどありません。初感染時よりも少なく小さい水ぶくれや潰瘍などの症状があらわれます。
性器周辺に痛痒い感覚を覚えて確認した際に水ぶくれや潰瘍を発見。そこで性器ヘルペスの再発を知る人が多いようです。
男性の初感染症状
男性も初感染時には重篤な症状を起こすことが多い傾向にあります。
陰茎、亀頭、冠状溝、包皮に水ぶくれや潰瘍ができ、女性と同じく発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの全身症状があらわれるケースが多いです。
男性の再発症状
男性の場合も、再発時は比較的症状が軽くあらわれる傾向にあります。初感染時と同じ場所に水ぶくれができやすいのが特徴です。
性器ヘルペスと症状が似ている他の感染症
性器ヘルペスの特徴的な症状である水ぶくれや潰瘍。しかし、これらの症状は性器ヘルペスだけに見られるものではありません。
性器ヘルペスと同じく性器付近に水ぶくれや潰瘍ができる性感染症として有名なのが梅毒です。
梅毒は近年、感染者が増えつつある性感染症です。「もしかして性器ヘルペスになったかも?」と思ったら、同時に梅毒も疑い検査をすると良いでしょう。
性器ヘルペスでできた潰瘍は、HIVなど粘膜や傷口を介して感染する感染症の入り口になります。
性器ヘルペス発症中は、他の感染症を引き起こすリスクが高いと考えて注意する必要があるでしょう。
再発の際も、普段と違った症状の現れ方をした場合は、病院で性感染症の検査を受けてみるのがおすすめです。
梅毒については以下の記事でも、原因・症状などを詳しく解説しています。
性器ヘルペスの感染経路
性器ヘルペスを発症すると、水ぶくれができた部分でウイルスが増殖します。
増殖したウイルスがキス、セックス、オーラルセックス、アナルセックスなど、粘膜同士の接触を介して感染するケースが多いです。
水ぶくれなど目に見える症状が出ている場合は、感染リスクが極めて高いと覚えておきましょう。
また、無症状にも関らずウイルス感染を起こす例も報告されています。これを「ウイルスの無症候性排出」と言い、水ぶくれなど目に見える症状がないため無自覚の内にパートナーを感染させてしまう恐れがあります。
ただし、無症候性排出は極めて稀な例なので、あまり神経質にならなくても良いでしょう。基本的には、水ぶくれや潰瘍などの症状が出ていない時は感染を起こしにくいとされています。
性行為以外にも、出産時の母子感染や家庭内の口唇感染(回し食べや回し飲みなど)、ウイルスが付着したタオルの共有、トイレの便座などでも感染する可能性があります。
一般的な性器ヘルペスの治療方法
性器ヘルペスの治療には、抗ウイルス剤を用いる方法が一般的。処方されたお薬を飲み切ることで、ウイルスの増殖や活性化を抑制します。
水ぶくれなど目に見える症状が出ている場合、既にウイルスが増殖・活性化しているため、薬の服用を始めても2日程度症状が悪化するケースもあります。
「薬が効かない」と勘違いして服用を止めてしまうと、さらに症状が悪化してしまうこともあるため注意しましょう。
医師の指示に従い、処方された薬は必ず飲み切るようにして下さいね。
性器ヘルペスを早く治す方法
性器ヘルペスが再発する前には、以下のような前駆症状が現れることがあります。
- 足の付け根がピリピリする
- 水ぶくれや潰瘍はないが性器に痛痒い感覚がある
- 腰周りに引きつるような痛みがある
これらの前駆症状が出た段階で、抗ウイルス剤を服用すると比較的早く症状を改善しやすいと言われています。
性器ヘルペスに有効な薬は医師の処方でのみ受けられますが、頻繁に再発する人の場合、前駆症状を感じた際に自己判断で服用できるよう事前に処方してもらえるケースもあります。再発しやすい人はかかりつけの医師に相談してみると良いでしょう。
性器ヘルペスに市販薬は効かない
ドラッグストアなどでは市販薬として、口唇ヘルペス用の薬が売られていることがあります。
ビダラビンやアシクノビルといった成分が配合されている口唇ヘルペス用市販薬は、性器ヘルペスに対して有効ではありません。
「同じヘルペスでしょ?」と自己判断で使ってしまうと、性器ヘルペスを悪化させてしまうことがあります。
性器ヘルペスの発症を疑った場合、必ず病院で適切な薬の処方を受けるようにしましょう。
性器ヘルペスは完治しないって本当?
性器ヘルペスの症状自体は、適切な治療をすれば1~2週間程で治まります。しかし、ヘルペスは再発の可能性がとても高く、一定期間内に再発する人が多いです。
性器ヘルペスをはじめとするヘルペスの原因ウイルスは感染後、神経付近に潜んで発症の機会を待ちます。
免疫力の低下など、発症のタイミングがくるとウイルスが増殖、水ぶくれや潰瘍を引き起こします。
治療により増殖や活性化が抑えられても、ウイルス自体は死滅することなく再び神経近くで潜伏するのです。
現代の医療ではヘルペスウイルスを完全に駆除する治療方法は存在しておらず、体内からヘルペスウイルスを完全に無くすことはできません。
これが、ヘルペスが何度も再発を繰り返してしまう理由です。
性器ヘルペスの感染予防方法3つ
自分やパートナーが性器ヘルペスに感染している場合、感染対策を充分に行って性交渉をする必要があります。
ヘルペスウイルスは、一度感染すると一生涯付き合い続けることになるので、日頃から感染対策を実践しましょう。
1.症状が出ている時の性的接触を避ける
水ぶくれや潰瘍などの症状が出ている場合、感染リスクが非常に高いです。症状が出ている場合は、性交渉を控えましょう。
もちろん、オーラルセックス、アナルセックスなども性器ヘルペス発症中は感染リスクが極めて高くなるため控えた方が良いです。
性器ヘルペスは、治りかけている時にパートナーへ感染させてしまう例も多く報告されています。
「水ぶくれもほとんど治ってきたから、そろそろ大丈夫かな」と治りかけの状態で性的接触をして、パートナーに感染してしまった人も少なくありません。
治療をはじめてから女性の場合2~4週、男性の場合2~3週は性的接触を控えた方が良いでしょう。
また、性器ヘルペス発症中に性器に触れた手で口元や目元を触ってしまうと、口唇ヘルペスや眼部ヘルペスを引き起こすこともあります。
性器に触れた手は、直ぐに洗うなど清潔に保つよう注意して下さい。
2.コンドームの着用
性器ヘルペスは、水ぶくれなどの症状が出ていないにも関らず粘膜や精液にウイルスが入り込みパートナーに感染することがあります。
無症状での感染する確率は極めて低いです。しかし、ヘルペスの抗体を体内に持たない人の場合、わずかなヘルペスウイルスが体内に入り込むことで感染・重症化することもあります。
普段からコンドームを使用して、性器ヘルペスの感染を防ぐよう心がけましょう。
妊娠を希望しているなどコンドームの着用が不可能な場合は、産婦人科や婦人科で相談してみても良いでしょう。
性器ヘルペスになったからといって、今後の妊娠・出産が不可能な訳ではありません。
抗体検査を受けてリスクに備える、免疫力が低下している時は性交渉を控えるなどの方法で、避妊をしない性交渉も可能です。
3.ウイルスが直接肌に触れる物の共有を避ける
性器ヘルペス発症中、直接粘液に触れるものを共有するのは避けるようにしましょう。
性器ヘルペスを発症しているパートナーと生活を共にする場合、入浴後のバスタオルなどを共有しないよう注意して下さい。
その他、お風呂の椅子や便座なども注意が必要です。どうしても共有が必要なものの場合は、アルコール消毒をして使うようにしましょう。
性器ヘルペスを発症している人と湯舟を共有することで感染する可能性は極めて低いと言われています。
しかし、可能性がゼロではない上、潰瘍にお湯が沁みたり症状を悪化させたりすることもあるので、性器ヘルペス発症中は湯舟に浸かるのは控えた方が良いでしょう。
まとめ
性器ヘルペスについて原因や感染経路、治療法、予防法などを紹介してきました。
性器ヘルペスは一度感染すると、完全に治ることのない病気です。常に再発の恐れはあるものとして、治療や予防に努めましょう。
性器ヘルペスになってしまった場合は、いかに上手に付き合っていくのかが大切です。パートナーに理解してもらうことも重要でしょう。
まずは性器ヘルペスに対する正しい知識を得て、パートナーに感染させない対策を心掛けて下さいね。
当院では、性感染症の検査・治療を実施しておりますので、気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。